第31回 商標権の基礎知識|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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経営事典

2022.07.12公開

商標権の基礎知識

自社の商品やサービスを顧客から選んでもらう際の目印となるネーミングやロゴマーク。
しっかり考えたものであるからこそ、きちんとその権利を守りたいですよね。
その際にぜひ知っておいていただきたいものが、今回ご紹介する「商標権」です。
商標権は自社のブランディングを考える上では欠かせません。
今回は商標権の基礎知識について解説します。

はじめに

「商標権」とは、「商標」を保護するための知的財産権です。
「商標」とは、自己の商品またはサービスと、他者の商品またはサービスを識別するための標識で、いわゆる、「ブランド」です。

「知的財産権」は、人間の創作物等を保護するものですが、創作物の保護を目的としない知的財産権があり、「商標権」もその一つです。

「商標権」は、創作物ではない既存の標識についても保護します。
「商標権」は、商品・サービスの提供にあたって、商標を使用することで商標に宿る、「業務上の信用」を保護するための知的財産権だからです。

例えば、◎◎という商標を付して、良質のカバンを販売し続けると、◎◎という商標が付されたカバンは、良質のカバンだと、需要者に認識してもらえるようになります。
これが、商標に「業務上の信用」が宿っている状態です。
このため、商標が創作物であることが要求されないのです。

今回は、「商標権」ではどの様に「商標」が保護されるか、どの様な「商標」が保護対象となるかをお伝えします。

1.「商標権」でどの様に「商標」が保護されるか

◎商標権の内容
「商標権」とは、一定期間(登録日=商標権の発生日から10年)、商標権を有する者のみ独占的に登録商標を使用出来る権利です。
なお、登録商標の類似商標の他者使用を禁止することも出来ます。

独占使用が出来る範囲・他者の使用を禁止できる範囲は、指定商品・サービス、及びこれに類似する商品・サービスに限られます。
従って、指定商品「カバン」について◎◎という商標の商標権がある場合に、この商標を他者が「飲食物の提供(つまりレストラン)」について使用することが出来ます。


商標権は、特許庁に出願手続きを行い、特許庁での実体審査を通過した場合に発生しますが、この指定商品・サービスは、出願書類において商標登録出願人自身が指定します。
商標登録出願人は、自己が商標を使用している、または使用する意思がある商品・サービスを指定します。

「商標権」は、上記一定期間が過ぎる前に更新手続きを行うことで、更に10年権利が延長します。
更新を続けることで、半永久的に存続します。
「業務上の信用」が宿っている限り商標を保護した方が良いからです。

「独占的」に使用の意味は、特許発明を独占的に実施することと同様ですので、「特許権の基礎知識」をご覧ください。

<第30回 特許権の基礎知識>
https://www.sansokan.jp/mng/keiei-column/030/

◎商標権を取得する方法
「商標権」は、特許庁に出願手続きを行い、審査を通過したもののみ権利が与えられる「産業財産権」です。

私の商標についての出願書類の一部をご参考に掲載させて頂きます。

【商標登録を受けようとする商標】の欄には、「商標」が表示されています。
これに加えて、【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】には、【第45類】とともに、指定商品・サービスが記載されています。

【第45類】とは、指定商品・サービスの「区分」です。
特許庁は、似た商品・サービスをグルーピングしており、このグループが「区分」と言われます。

指定商品・サービスの区分数が増えると、特許庁料金が高くなっていきます。
例えば1区分の出願費用は、12,000円ですが、2区分の出願費用は、20,600円になります(2022/6/3現在)。

実体審査では、商標に自己の商品・サービスと他者の商品・サービスとを区別する力(識別力)があるか、自己の商標と同一・類似の他者の商標権がないか等が判断されます。
「特許」の審査のように、新規性や進歩性が要求されません。

識別力がない商標は、
① 商品・サービスの普通名称のみ表示する商標(指定商品「時計」に、商標「時計」)
② 商品・サービスの慣用商標(指定商品「清酒」に、商標「政宗」)
③ 単に商品の産地、販売地、品質等又はサービスの提供の場所、質等のみを表示する商標(指定商品「シャツ」に商標「ホワイト」)
④ ありふれた氏または名称(山田、スズキ)
⑤ 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(仮名文字の1字、数字、アルファベット1字または2字)
等の、需要者が何人かの業務に係る商品または役務であることを認識することができない商標です。

自己の商標と同一・類似の他者の商標権がないかは、指定商品・サービス、及びこれに類似する商品・サービスに限って審査されます。
指定商品「カバン」について◎◎という商標の審査において、同じ商標について「飲食物の提供(つまりレストラン)」の他者の商標権があっても、審査を通過します。

商標権を取得するための手続きの流れについても、「特許権の基礎知識」をご覧ください。
審査請求がない点を除いて、ほぼ同様です。

<第30回 特許権の基礎知識>
https://www.sansokan.jp/mng/keiei-column/030/

2.保護対象となる「商標」はどのようなものか

文字商標(例えばロゴマーク)、図形商標(例えばシンボルマーク)、立体商標は、商標権の保護対象となります。
立体商標とは、立体的な標識であり、例えば、ケンタッキーフライドチキン(登録商標)のカーネル・サンダーズ像等です。

文字商標、図形商標、立体商標は、組み合わせて結合商標として出願することもできます。
上記は、図形商標と文字商標の結合商標です。

他に、平成27年4月1日より、新しいタイプの商標(動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標)も保護対象となっています。
「におい」や「味」は保護対象ではありません。

(新しいタイプの商標)
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/document/panhu/panhu23.pdf

3.商標権取得・商標の使用での注意点

◎商標権取得での注意点
(1)自己の商標について商標権を取得せずに使用していると、他者が出願して商標権を取得してしまう場合があります。
自己の商標の使用が合法的にできなくなる可能性があるため、商標権を取得してください。

(2)商標権は、指定商品・サービスの範囲で商標の使用を独占等できるものです。
従って、自己の事業を十分にカバーできる適切な指定商品・サービスで商標権を取得してください。

(3)自己の商標と同一・類似の商標について、同一・類似の商品やサービスの他者の商標権があれば、自己の商標について商標権を取得することが出来ないばかりか、自己の商標の使用が商標権侵害になってしまいます。
商標を採用する際には、他者の商標権の調査を行ってください。

(特許庁の無料検索ツール)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0100

◎商標の使用での注意点
3年間継続して商標を使用しなければ、不使用取消審判により商標権が取り消されてしまう場合があります。
3年間継続して不使用の状態にしないでください。

なお、商標権を取得した商標と、社会通念上同一の商標を使用しなければなりません。
例えば、上記のようにシンボルマークとロゴマークの結合商標について商標権を取得したにもかかわらず、シンボルマーク単体、ロゴマーク単体でだけしか使用しなければ、不使用取消審判の対象になります。
フォントの変更等は社会通念上同一の商標になります。

(2022年7月12日掲載)

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

竹口 美穂(たけぐち みほ)氏

竹口 美穂(たけぐち みほ)氏

 

弁理士、基本情報処理技術者、一級知的財産管理技能士(コンテンツ専門業務)、付記登録、ビジネス著作権検定上級
みなほ特許事務所
大阪産業創造館経営相談室 経営サポーター

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