企業が何か新しい取り組みをする時に、資金の問題がでてくることがあります。
その際に、補助金の活用を考えられる方も多いのではないでしょうか。
本日は、そういった方に向けて補助金とは何か、どのように情報収集するのか、申請する際のポイントなどを中心にお伝えします。
補助金とは
補助金とは国や自治体が企業の販路開拓や生産性向上など様々な目標を達成するために予算をとり、事業者に対して資金面で支援するものです。
補助金の申請から交付までの流れは図表①のとおりです。
図表①:補助金の申請から交付までの流れ
多くの補助金には審査があり、補助計画を提出して採択されなければ補助金を受けとることはできません。
また、実際にお金を受け取る(交付)のは最後になりますので、必要な資金はいったん事業者が用意する必要があります。
補助金・助成金の違い
よく補助金と助成金を一緒にされることがありますが両者は別物です。
図表②のように目的、交付先などが異なります。
本コラムは主に補助金ついて解説します。
図表②:補助金・助成金の比較表
国家予算と補助金
一般的に国家予算は8月に各省庁が次年度の概算請求書(予算案)を財務省に提出します。
閣議決定を経て、翌年1月に国会に提出され、衆参両院で可決されると次年度より政策が実行されます。
しかし、補助金は補正予算として組まれることが多いため、年度内に臨時国会で審議され、年度内に追加されることがあります。
情報収集方法
経済産業省が管轄する補助金の場合は、経済産業省HPの予算・概算要求欄に掲載されます。
https://www.meti.go.jp/main/31.html
上記のHPで補助金の概要や予算額を知ることはできますが、公募開始のタイミングや詳細な情報は公表されません。
具体的な情報は、補助金の運営を委託される事業者が決まり、専用HPが公開されるのを待つ必要があります。
情報収集方法として、中小企業基盤整備機構が運営しているJ-Net21のメールマガジンを配信登録してください。
毎週火曜日に補助金の公開情報だけでなく様々な支援情報が手に入ります。
https://krs.bz/smrj-hp/m/j-net21_entry
よく利用される補助金
幅広い事業者に利用されている補助金を図表③に示しました。
図表③:よく利用されている補助金
上記以外に細かい要件があります。詳細は各補助金のHPにてお確かめください。
補助計画作成のポイント
提出した補助計画書を有識者が審査項目に従って評価します。
採択されるために重要なポイントを以下に説明します。
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公募要領を入念にチェック
公募要領とは補助金のルールブックのようなもので、補助金の目的、対象者、補助対象経費、審査項目などが記載されている重要なものです。
対象経費でないもので申請される方も多く、せっかく採択されたとしても、要件をみたしていないため、交付に至らないこともありますので、最初に必ず目を通してください。
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一貫したストーリーがある
事業者は外部環境として、市場(規模、成長性、ニーズなどの変化)や競合の動向があり、内部環境として、自社の強みや弱みがあるはずです。
それらを踏まえて、自社の将来像とそれに対する課題、そして補助金を使うことでその課題をどのように克服し、どんな効果が期待できるのかといった、一貫性のあるストーリーが必要です。
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自社の強みと投資を組み合わせることで差別化できる
設備を導入することで新商品の開発を計画する方がいますが、それだけを記載するとその設備を導入すれば誰でもその商品を作れることができ、差別化できないことになります。
そうではなく、自社の強みと購入した設備を組み合わせることで、他社にはできない新しい商品・サービスを創り出すことができるという計画が望ましいです。
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加点項目は積極的に取得する
同じぐらいのレベル感の申請書の場合、最後に選ばれるのは加点項目がある事業者です。
それぞれの補助金には加点項目があり、それに該当すると採択されやすくなります。
毎年の傾向から何が加点になるのか予想を立てて、あらかじめ要件を満たすようにしておきましょう。
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「ですます調」、「である調」をどちらかに統一する
混在していると幼稚な印象を与えてしまいます。
審査に直接影響はないかもしれませんが、どちらかに統一しましょう。
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文章を減らし、図・写真・表を活用する
文章で書くよりも図・写真・表などのほうが伝わりやすい内容があります。
例えば、市場規模の推移などデータの大小を比較するのであれば、棒グラフにしたほうが見た瞬間に理解できます。
生産性が向上することを伝えたいのであれば、図表③のように比較表を作成するとわかりやすいです。
図表④:従来と補助事業後の工程の比較表
生産性が向上した点を赤字や四角で囲むことで、審査ポイントをアピールできます。
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タイトルをつける
長々と文章を書くと、何について記載しているのか、すべてを読み切らないと理解できません。
アピールしたいことが審査員に伝わらないのはすごくもったいないので、きちんと結論をタイトルにして、この文章で何を伝えたいのかを明確にしてください。
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専門用語は使わないか注釈をつける
審査担当者は必ずしも申請者の業界に精通しているわけではありません。
業界の中でしかわからないような専門用語が多い場合、審査担当者はわざわざインターネットでその用語の意味を調べてはくれません。
中学生でも理解できるぐらい平易な文章にして、どうしても専門用語を使う場合は注釈をつけてください。
URLを張り付けている場合も同様で、わざわざそのページを見に行くことはありません。
伝えたいことがある場合は、必ず申請書に記載してください。
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人を減らす計画にしない
設備を導入することで業務効率化を図り、従業員を減らす計画を立てる方がいます。
国が運営している補助金という性質上、人を減らす計画は評価されにくいです。
効率化することで捻出された時間を使って、攻めの経営に転じて、さらなる成長を図るようなストーリーが求められます。
最後に計画書が出来上がったら、計画の内容を知らない第三者に確認してもらってください。
内容が理解できない、理解するのに時間がかかる、補助金の必要性を感じない場合は、修正する必要があります。
また、申請の準備をしているとわからないことが多々でてくるかと思います。
その場合は、補助金の運営を委託されている事務局に必ず確認してください。
締め切り間際になると事務局の窓口がたいへん混雑しますので、早めに対応することをお勧めします。
今回の記事は2023年1月末時点の情報です。
最新の補助金の内容は各補助金のHPにてお確かめください。
※図表:1、図表:2、図表:3、図表:4は谷口自作による。