労働人口の減少により人材獲得競争が激化し、母集団を集めることに焦点を当てたこれまでの採用手法では、中小企業の採用はさらに難しくなってきています。そこで今回は、求人票だけでは伝えられない自社の魅力を、”狭く深く”発信し求職者に訴求する“採用狭報”という考え方のポイントについてお伝えします。
1.採用サービスにお金を投下するだけでは採用ができない時代に
まずは大前提として、日本が直面する(既にしている?)労働力人口問題。今後、右肩下がりに大幅減少すると言われています。それに伴い、図にもある通り2022年10月時点ですでに求人倍率は2.13倍を記録しています。求人、つまり仕事の数に対して、転職を考えている人はその半分以下しかいないという事実。人材サービス、コンサルティング、IT・通信業界などは約6-7倍前後を推移しており、本当にぞっとする数字となっています。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000290.000016455.html
このようなデータから、さらに人材獲得競争は激化の一途を辿ることが目に見えており、「採用サービスを使う(お金を投下する)だけでは採用ができない時代」にすでに到達していると言えるのではないでしょうか。それほどまでに採用サービスを使うだけでは採用が難しく、今後はどう使っていくか、ひいてはどう自社の魅力を魅せていくかといった「採用サービスの使い方 / 自社の魅せ方」が必須となります。
2.“採用狭報”という考え方について
採用はよく釣りに例えられることがあります。「どの池で魚を釣るのか」ひいては、「どのサービスを使って人を採用するのか」。採用において、ターゲットがどの池(サービス)に一番多いのかを選定することは間違いなく一番重要です。ただ、上述したデータが示すように、採用競争は激化し、採用サービスを使うだけでは採用ができなくなりつつあります。
そこで重要なのは、適切な”池選び”と並行して”竿や餌磨き”をすることがあげられます。池に行ったがボロボロの釣竿を持っていた、そもそも餌自体がついていなかったという状態は意外と少なくありません。
「竿や餌磨き」と聞くと「採用広報」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ただ、採用広報はハードルが高く、そもそも企業や企業フェーズによって向いているか否かが重要となってきます。その理由を理解するために、類似の「採用広報」「採用マーケティング」の定義とともに「採用狭報」という考え方についてご紹介させていただきます。
■採用広報とは
知らない人に自社のことを知ってもらうこと、つまり「認知を取ること」を指します。知らない人、つまりマスに届けるため、届けるハードルが高く(知らない企業のコンテンツを見てもらうにはフックとなるネタが必要なので)、そもそも届いたとしても「自社の採用ターゲットではない人」に広く浅く届いている場合が多いです。
知らない企業のコンテンツでも見てみたいと思うようなフックとなるようなネタがあり、なおかつ広く浅く届いてもその中に一定の採用ターゲットがいるような採用人数や募集職種が多い企業向けと考えます。
■採用マーケティングとは
定量的なデータが取れることを前提に数値改善を行うことを指します。自社採用サイトやあらゆる採用サービスの数値データを取り、数値分析をもとに適切な施策へ落とし込む必要がありますので、一定の予算や労力がかかり、なおかつ適切に分析ができるような人材が必要となります。
余談ですが、昨今よく「採用マーケティング」という言葉を耳にすることが多いと思いますが、それはマーケティング観点を必要としなかった採用領域において、「採用にもマーケティング観点を持ちましょう」という意味合いで採用マーケティングという言葉が流行ったため、曖昧な意味合いで広まっている傾向にあるのではと考えます。
■採用狭報とは
「知らない人に自社のことを知ってもらうこと(認知)」を採用広報と言うのであれば、「少なからず自社のことを知っている人或いは、今後興味を持ってくれそうな候補者(ペルソナ)に"のみ"向けたコンテンツを作成し、態度変容を促すこと」を採用狭報と呼んでいます。
例えばある媒体の応募が100PVに1応募だったところ、記事コンテンツ(採用メディア)などを作成し、情報の透明度をあげ、求人媒体だけでは伝えきれない魅力を伝えることで50PVに1応募くるようになるイメージです。なので、母集団を無造作に集め捌いていくのではなく、ターゲットに刺さるような、自社の求人を見てくれた人がしっかり応募するような仕組みを作ることを指します。
3.採用狭報の役割を理解した上で、「認知」以降のステップに力をいれる
採用狭報の定義をなんとなくはご理解いただけたのではないでしょうか。さらに深く理解いただくために、採用狭報の役割を図を使用し解説していきます。
出典:筆者作成
上記の図は「キャンディデイト・ジャーニーマップ」と言い、候補者の方がその企業を認知し、入社するまでの流れを各プロセスごとに整理した図となります。「採用広報」「採用マーケティング」「採用狭報」3つに紐づく施策が、それぞれどのステージで機能しているのかをまとめています。
気づいた方も多いと思いますが、実は「認知」以降の施策は、対面での施策か採用狭報の施策がほとんどとなっています。また、認知を拡大する施策やサービスはたくさんあるので、認知以降の施策が採用においての差別化に強く繋がると言えます。
いかがでしたでしょうか?あえて採用狭報というような気を衒った言葉を使っていますが、要は採用サービスのみに依存するのではなく、少しずつでもいいので自社の魅力を”狭く深く”発信し歩留まりを改善していくような採用をしていきましょうということが伝えたかったことです。労働人口は右肩下がりになり、採用は今よりも激化することは紛れも無い事実ですので、今よりも苦しい状況になる前に採用狭報という対策を打つことをオススメします。この採用難の時代を一緒に乗り越えましょう!