第15回 『ビジネスモデル』① ~ビジネスモデルとは?~|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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2021.01.26公開

『ビジネスモデル』①
~ビジネスモデルとは?~

本コラムを執筆している2021年初頭、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続き、経済が大打撃を受けています。
メディアでは、企業に向けてビジネスモデル転換の必要性が叫ばれ、行政施策として「ビジネスモデル転換支援事業」が開始するなど、『ビジネスモデル』という文字を目にすることが増えました。
そして今に限らず、長く存続している企業には、大きな変化の局面にビジネスモデルの転換を行ってきた企業も多く存在します。
では、「ビジネスモデル」とは、いったい何なのでしょうか?

ビジネスモデルの定義

“儲かる仕組み”“ビジネスの仕組み”“価値とお金の交換で利潤を得る一連構造”“価値の創造”など、『ビジネスモデル』はさまざまな言葉で表現されています。
しかし実際のところは、「世界の経営学において、ビジネスモデルの研究はほとんど確立されていない」(入山章栄著『世界標準の経営理論』<ダイヤモンド社>より)という言葉に代表されるように、決まった定義はないのが現状のようです。

一方、研究者間で議論されている内容には共通項があります。
それは、
・「価値の創造」を目的としていること
・「価値の創造」を実現させるさまざまな要素の関係性を、仕組みとして統合的にとらえるものであること
です。
平たく言えば、「価値創造の仕組み」がビジネスモデルであるといえます。

ビジネスモデルの転換が求められる理由

ではなぜ、今のコロナ禍のような局面において「ビジネスモデルの転換」が必要になるのでしょうか?
なぜ、単に売り方を変えるだけではダメなのでしょうか?

その理由の1つは、外部環境の変化により、消費行動が一時的ではなく、恒常的に変化する可能性が高くなることです。
単なる一時しのぎの対策では、この先、事業が立ち行かなくなる恐れがあり、ビジネスモデル全体の見直しを含めた対策を取ることが重要になります。
顧客の消費行動が変わると、今まで提供してきた価値が認められなくなったり、提供方法が受け入れられない事態を招いたりします。
百貨店を例に考えてみましょう。
これまでは「対面での丁寧な接客」が強みで、リアル店舗での販売が中心でした。
しかし、インターネットの普及による通信販売の市場拡大に加え、今回のコロナ禍のように顧客の行動の自粛が続くことを受け、店頭の売上が激減していきました。
今では、リアル店舗の販売だけでは生き残りが難しいと判断し、百貨店らしさを生かしたネット通販により注力しています。

2つめの理由は、ビジネスモデルはその構成要素が相互関連しているため、1つの要素が変わると、他の要素も必然的に変えないと成り立たなくなることです。
例えば、商品の売り方をリアル店舗での販売からネット販売に変えることで、どのような変化が起こるでしょうか?
顧客の層が変わることもあります。
商品の良さの伝わり方が異なり、違う伝え方の模索が必要になることもあります。
また、梱包や郵送の仕方、価格などの検討も必要で、収益やコストも変わってきます。
提供方法(チャネル)が変わるだけで、ほぼすべての要素において見直しや新たな取り組みを検討することになります。

外部環境の変化に合わせてビジネスモデルを変え、顧客の求める価値を創造していくことが必要です。

ビジネスの創造や変革と『ビジネスモデル』

そもそもビジネスモデルは、新たにビジネスを創る時や、ビジネスの見直しや変革をする時には、なくてはならないものです。
新たなビジネスは、ビジネスアイデアやビジネスのタネから生まれていきます。
それをビジネスとして実現し成長させるためには、その内容を具体化するビジネスプラン(事業計画)が必要です。
ビジネスプランを作るには、「なぜそのビジネスを行うのか」「誰向けに行うのか」といった骨格部分と、それを実現させる仕組みづくりが必要で、これが『ビジネスモデル』です。
そして、顧客は誰で、その顧客に提供する価値をどう創り届けるかを、構成要素をもとに因果関係でつなぎ合わせる、これが『ビジネスモデルの構築』です。
研究者の中には、ビジネスモデルを“ビジネスの物語”と定義する人もおり、ビジネスを筋書きとして語れることが重要であると伝えています。
こういったことから、ご支援の時には、ビジネスプラン作りにいきなり取り掛かかるのではなく、まずはビジネスモデルという筋書きを作り、全体像を俯瞰してからビジネスの詳細を具体化していくことをお勧めしています。

特に、“VUCAの時代”(※注)と呼ばれる昨今では、今までの経験だけでは乗り越えられず、また新たなことをするにも高いリスクを伴います。
このような時代には次のような視点が大切です。

◆複数の可能性を探求し、アイデア→仮説→プロトタイプ(試作)→調査→検証→実行→…を繰り返し行いながらリスクを減らしていくというステップで進め、具体化を図っていくこと

◆デジタル化でスピードが増す中では、計画にじっくり時間をかけるより、ある程度の正確さをもとに迅速な意思決定で物事を進め、ビジネスを進めていくこと

また、多種多様な商品・サービスが溢れる今は、新たなビジネスがヒットする確率はきわめて低く、またヒットしてもすぐ模倣されることも多く、優位性も一時的に過ぎない、過酷な状況でもあります。
こういったことからも、ビジネスモデルを創り検証を繰り返してから、ビジネスプランに移行することが効果的だと考えます。

不確実で変化が激しく、競争激化の時代を生き抜くためには、外部環境に目を向け、耳を研ぎ澄まし、素早いスピードで対応していく精神と行動力が必要です。
まずは、自社のビジネスモデルを把握し、環境変化に対応できているか、またできていないとすれば何が必要かをチェックすることが大切です。
ビジネスモデルを活用した自己評価ならびに変革をお勧めします。

※注VUCAの時代とは
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性) の頭文字からつくられた造語。複雑で予測不能な時代と表される。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

大西 眞由美(おおにし まゆみ)氏

大西 眞由美(おおにし まゆみ)氏

 

有限会社グランレーヴ 代表取締役
中小企業診断士
大阪産業創造館 経営相談室 経営サポーター

日用品メーカー、製薬メーカーのマーケティング部門において、商品企画開発や商品育成を約15年間担当する。
独立後は、その経験や中小企業診断士の資格を活かし、製造業・小売業・サービス業を中心に、ビジネスモデルデザイン・事業戦略策定、新製品・新規事業開発等の支援を通じて、「未来の持続可能な成長をめざす"経営づくり"」をサポートしている。

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