2022.12.27公開
社会保険業務の基礎知識②
前回は社会保険制度の概要と、適用事業所の要件についてお伝えいたしました。今回は、各制度における被保険者についてざっくりとみていきます。
被保険者とは
適用事業所において要件を満たす者は被保険者となります。適用事業所と同様、被保険者についてもそれぞれの制度によって要件が異なります。
ここでは、制度ごとの被保険者の主な要件についてみていきます。
労災保険
雇用保険
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◆ 適用事業に雇用される労働者は、常用・パート・アルバイト・派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、① 1週間の所定労働時間が20時間以上であり、②31日以上の雇用見込みがある場合には、原則として被保険者となります(会社の取締役や役員、事業主の同居の親族等は原則として被保険者となりませんが、労働者的性格の強いものであって、雇用関係があると認められると雇用保険に加入できる場合があります)。
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◆ 以下に該当する場合は、原則として雇用保険は適用されません(被保険者となりません)。
- 1週間の所定労働時間が20時間未満である者
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同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者
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季節的に雇用される者であって、次のいずれかに該当するもの
- ♢4箇月以内の期間を定めて雇用される者
- ♢1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者
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いわゆる昼間学生等
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船員であって、漁船に乗り組むため雇用される者(1年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く)
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◆ 雇用保険の被保険者には4種類あり、平成29年1月1日より65歳以上の労働者についても雇用保険の適用対象となっております。
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◆ また、令和4年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されています。雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、以下の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
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複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
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2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
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2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
健康保険・厚生年金保険
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◆ 適用事業所に常時使用される者は、国籍・年齢・賃金の額等に関係なく、すべて被保険者となります(健康保険は75歳まで、厚生年金保険は原則70歳に達するまでの加入)。
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◆ 「常時使用される」とは、雇用契約書の有無等とは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受けるという使用関係が常用的であることをいいます(試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められることとなります)。
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◆ また、健康保険・厚生年金保険の被保険者とされない者は、次表のとおりですが、一定期間を超えて雇用される場合等は、「常時使用される」ものとみなされ、被保険者となる場合があります。
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◆ 健康保険では、被扶養者についての病気・けが・死亡・出産についても保険給付が行われます。この保険給付が行われる被扶養者の範囲は次のとおりです。
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被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人(これらの方は、必ずしも同居している必要はありません)。
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被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人(「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます)。
- ① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
- ② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
- ③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子(ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は除きます)
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◆ 被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入により生計を維持されていることが必要です。認定については、以下の基準により判断をします。
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◆ 退職や労働時間の短縮等によって健康保険の被保険者資格を喪失したときに、一定条件の下、個人の希望により、健康保険の任意継続被保険者となることが可能です。条件等については、次回の被保険者に関する手続き(従業員が退職したとき)でみていきます。
(2022年12月27日掲載)
↓今回のコラムを書いたのはこの方↓
賀来 進哉(かく しんや)氏
株式会社シナジス 代表取締役社長
社会保険労務士
十数年間、創業や新規部門の立ち上げ、スタッフの管理育成などを経験後、社会保険労務士として独立。
現在は経営者1人から従業員数百人規模の手続き業務や就業規則等の策定、求人サポート、評価制度・研修制度の構築をはじめ、勤怠クラウドの導入支援など「適正な労務管理」のため幅広い支援を行っている。
また、資金繰り支援やキャッシュフロー計画の予実管理サポートなど、経営者の「お金に関する困り事」の改善をめざし、日々精力的に活動している。
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