第47回 マーケティングで気を付けたい、広告表現を規制する法律とは①|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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2023.10.10公開

マーケティングで気を付けたい、広告表現を規制する法律とは①

インターネットの発達により、簡単に商品を購入できるようになった一方で、悪質な広告による消費者の被害が増加しており、広告表現への規制は厳しくなっています。本コラムでは、2回に分けて中小企業がマーケティングにおいて気を付けるべき広告表現に関する規制について説明していきます。
第1回目の今回は、薬機法と景品表示法(景表法)の基礎知識について解説いたします。

広告表現を規制する法律とは

マーケティングを行う上で広告によるPRは不可欠と言えますが、広告の目的が消費者に対して購買意欲を持ってもらうことにある以上、自社商品の魅力を最大限にアピールする表現をしたいと考えるのは当然であり、むしろそれは広告の使命ともいえます。
もっとも、誇大な表現や実際の効果・品質とは異なる表現を用いた広告、価格その他の取引条件について実際と異なる広告が無条件で許されてしまうとすれば、誤った情報が氾濫するともに、それを信じて購入した消費者の利益を害する結果となります。

そのような結果を防止するために、薬機法、景品表示法(景表法)、健康増進法及び特定商取引法などの法律によって広告表現が規制されています。
BtoC取引を行う事業者としては、法律のルールを守りながら、消費者に商品やサービスの魅力を最大限に理解してもらえるような広告表現を工夫することがマーケティングにとって重要となるのです。

健康食品や飲料水等については薬機法に注意

健康食品や飲料水等に関しては、医薬品としての承認を得ていないのに、さも医薬品のような効果があるかのような表現をしてしまうと薬機法違反となることに注意が必要です(薬機法68条)。

違反するか否かは、医薬的な効能効果の表現に該当するか否かで判断されますが、疾病の治療又は予防を目的とする効能効果、身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果(ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現は除く。)等が該当することになります。より具体的には、「糖尿病の改善に」「高血圧の予防」「肝障害・腎障害をなおす」「ガンに効く」「便秘がなおる」「疲労回復」「老化防止」「血液の浄化」などがこれらに該当する典型例です。

薬機法に違反した場合には、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこれの併科が科される場合があり、薬機法違反を理由として販売業者の代表者や従業員が逮捕されたニュースも定期的に見受けられますので注意が必要です。
薬機法に違反しないためには、疾病の治療や予防を印象付ける表現は避けること、身体の組織に作用して効果があるような表現を避けることが重要です。

対策の一例を挙げれば、商品の味や飲みやすさを強調したり、「健やかでハリのある毎日」などと抽象的な表現や気持ちとしての表現に変更すること、「栄養補給」や「健康維持」の表現に置き換えできないかを検討してみることが挙げられます。

消費者向けの広告は景表法に特に注意

BtoC取引における広告に関する規制としては、その他にも景表法による規制について特に注意が必要です。

景表法においては、①自己の商品やサービスに関して、品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると示すもの、あるいは、事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すものを優良誤認(景表法5条1号)として禁止しています。
例えば、合理的な根拠がないにも拘わらず、いくら食べても飲むだけでダイエット効果が得られる商品であるという広告や、事実に反して業界NO.1の品質を持った商品であるかのような広告などがこれに当たります。言い換えれば、商品等の「品質・効果効能・性能」に関して消費者に誤認を生じさせるような表示といえます。

また、②自己の商品やサービスに関して、価格その他の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの、あるいは、競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものを有利誤認(景表法5条2号)として禁止しています。
例えば、割引価格の適用を受けるためには厳しい条件の縛りがあるにも拘わらず一律に適用を受けられるかのように表示したり、追加料金がかかる場合があるのに一切これが必要ないかのような表示をすること、常時割引をしているのに今だけの期間限定キャンペーンであるかのように装う表示などがこれに該当します。言い換えれば、「経済性」に関して消費者に誤認を生じさせるような表示といえます。

その他には、③商品やサービスの取引に関する事項について特に一般消費者に誤認されるおそれがあるとして内閣総理大臣(消費者庁長官)が指定する表示(景表法5条3号)についても禁止されています。
この指定について現在は、無果汁の清涼飲料水、原産国、消費者信用の融資費用、おとり広告、有料老人ホームに関する広告等が指定の対象とされておりますが、令和5年10月1日からは、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定がなされ、いわゆるステルスマーケティングが禁止されたことで注目を集めています。どのような表示がステルスマーケティングとして禁止されるのかについては、消費者庁が公表している『「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準』(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)をご参照ください。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

濱永 健太(はまなが けんた)氏

濱永 健太(はまなが けんた)氏

弁護士法人飛翔法律事務所 弁護士

2004年岡山大学法学部卒業、2008年立命館大学法務研究科法曹養成専攻修了、2009年弁護士登録と共に現事務所に入所、2015年パートナーに就任。
広告やキャンペーンを規制する景品表示法・薬機法、BtoC取引に関する消費者契約法、ウェブサービスに関する特定商取引法、その他不動産、相続・事業承継を多く手掛ける。

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