第39回 社会保険業務の基礎知識④|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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経営事典

2023.1.31公開

社会保険業務の基礎知識④

前回までで、社会保険制度の概要と適用事業所の要件(社会保険業務の基礎知識①)、被保険者の要件(社会保険業務の基礎知識②)、事業所関係と⼊退社関係の基本的な⼿続き(社会保険業務の基礎知識③)についてお伝えいたしました。
今回は、各制度における保険料の納付関係の手続きについて、ざっくりとみていきます。

保険料の納付について

労働保険(労災保険・雇用保険)

  • ◆ 労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(これを「保険年度」といいます。)を単位として計算されることになっており、その額はすべての労働者(雇用保険については被保険者)に支払われる賃金の総額(毎月の給与や賞与等、労働の対償として支払われるすべてのもので、税金や社会保険料等を控除するの支払総額)に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定されます。
  • 労災保険では、事業場の労働災害の多寡に応じて、一定の範囲内で労災保険率等を増減させる制度(メリット制)が設けられています。労災保険料が上がるから労災保険を使わせないという会社が稀にみられますが、事業の種類ごとに設定された最低労働者数に満たない場合や、労災保険の保険給付を受けた場合でもメリット収支率によっては、労災保険料は上がりません。詳しくは下記リンク先のPDFをご参照ください。

    労災保険のメリット制について【厚生労働省】
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhokenpoint/dl/rousaimerit.pdf

  • ◆ 労働保険の保険料について、成立時の概算保険料の申告・納付については前回(社会保険業務の基礎知識③)をご参照いただき、ここでは毎年手続きが必要となる年度更新についてみていきます。

労働保険(労災保険・雇用保険)/年度更新

  • ◆ 労働保険では、毎年1回、年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と年度の保険料を納付するための概算保険料の申告・納付の手続きが必要となります。この手続きを「年度更新」といい、毎年6月1日から7月10日までの間に「申告書」と「納付書」を作成し、申告・納付することとなります。
  • ◆ 必要な手続き(年度更新)

    納付すべき概算保険料の額が40万円(労災保険又は雇用保険のいずれか一方の保険関係のみが成立している事業については20万円)以上の場合には、申請により延納することが可能です。 ♢労働保険事務組合に事務委託している場合には、金額に関わらず、延納することが可能となります。

    年度更新時の予想よりも賃金総額(全員の賃金額の合計)が100分の200(2倍)を超えかつ、増加後と増加前の概算保険料額との差額が13万円以上になる場合、年度の途中で増加した分を申告・納付しなければならない旨が、労働保険徴収法で規定されております。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

  • ◆ 社会保険における保険料は、被保険者の報酬から、標準報酬月額が保険者によって決定され、これに基づいて保険料が各人ごとに決定されます。以下、共通する内容をまとめましたのでご参考ください。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)/被保険者資格取得時の決定

  • ◆ 採用時に締結された雇用契約の報酬に基づいて、標準報酬月額が決定されます。
  • ◆ 資格取得時に決定された標準報酬月額は、原則としてその年の8月31日までの標準報酬月額となります。ただし、6月1日から12月31日までに被保険者資格を取得した方については、翌年の8月31日までの標準報酬月額となります。
  • ◆ 必要な手続きについては、前回(社会保険業務の基礎知識③)をご参照ください。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)/定時決定(算定基礎届)による決定

  • ◆ 社会保険では、毎年1回、標準報酬月額を決定し直すことになっており、これを「定時決定」といいます。
  • 定時決定の対象は、原則として、7月1日現在のすべての被保険者及び70歳以上被用者となりますが、次のいずれかに該当する人は除かれます。
    • 6月1日以降に資格取得した方
    • 6月30日以前に退職した方
    • 7月改定の月額変更届を提出する方
    • 8月又は9月に随時改定が予定されている旨の申し出を行った方
  • ◆ 決定し直された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
  • ◆ 必要な手続き(定時決定)

社会保険(健康保険・厚生年金保険)/随時改定(月額変更届)による決定

  • ◆ 定時決定とは別に、被保険者の報酬が、固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額の改定が必要となります。これを「随時改定」といいます。
  • 随時改定は、次の3つの条件をすべて満たす場合に行います。

    ① 昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。

    • 昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
    • 給与体系の変更(日給から月給への変更等)
    • 日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
    • 請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
    • 住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更

    ② 変動月から3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。

    3か月とも支払基礎日数が17日以上である。

  • 随時改定の対象となった場合は、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目の標準報酬月額から改定されます。
  • 6月までに改定された場合は、原則、当年8月までの各月に適用されます。
  • 7月以降に改定された場合は、原則、翌年8月までの各月に適用されます。
  • ◆ 必要な手続き(随時改定)

社会保険(健康保険・厚生年金保険)/被保険者賞与支払届

  • ◆ 社会保険では、年3回まで賞与の支給については、賞与支払届による届け出が必要となります(年4回以上は標準報酬月額の対象)。
  • ◆ 賞与支払届に記載された賞与額(1,000円未満切捨て)を標準賞与額といい、保険料の計算対象となります。
  • ◆ 必要な手続き(賞与支払届)

今回、計4回に渡り、社会保険の基礎知識について、ざっくりとみてきました。都合上、説明不足となった箇所や十分みることができなかった箇所もございますが、皆様の経営の一助になれば幸いです。

(2023年1月31日掲載)

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

賀来 進哉(かく しんや)氏

賀来 進哉(かく しんや)氏

 

株式会社シナジス 代表取締役社長
社会保険労務士

十数年間、創業や新規部門の立ち上げ、スタッフの管理育成などを経験後、社会保険労務士として独立。
現在は経営者1人から従業員数百人規模の手続き業務や就業規則等の策定、求人サポート、評価制度・研修制度の構築をはじめ、勤怠クラウドの導入支援など「適正な労務管理」のため幅広い支援を行っている。
また、資金繰り支援やキャッシュフロー計画の予実管理サポートなど、経営者の「お金に関する困り事」の改善をめざし、日々精力的に活動している。

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