第4回 『資金繰り』改善③~変動損益計算書から見る改善ポイント~|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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2020.6.23公開

『資金繰り』改善③
~変動損益計算書から見る改善ポイント~

前回は、経営者の意思決定に役立つ「変動損益計算書」についてご紹介し、この計算書から見える資金繰り改善のための5つの打ち手を次のようにお伝えしました。

①売上高を増やす
②変動費を減らす
③限界利益(率)を増やす
④固定費のうち、人件費を効率よく使う
⑤その他の固定費を減らす

今回は、これらを一つ一つ、紐解いていきます。

①「売上高を増やす」ための検討ポイント

売上が落ち込んでいる時にやってしまいがちなのが「値下げ」です。
価格に敏感な顧客が反応すれば、一時的に売上は上がるかもしれません。
しかし、一度価格を下げると元に戻すことは大変です。
価格競争に巻き込まれ、売れば売るほど利益が減るスパイラルに陥るおそれがあります。

そこで、売上高を増やすための施策を考える時に押さえておきたいポイントを解説します。
「売上を10%上げよう!」といっても具体的な方法を見出し、行動にできなければ変わりません。
このような時は、売上を分解して考えることをおすすめしています。

売上は、
売上 = 客数 × 客単価 × 購入頻度 
と定義されます。
「客数」「客単価」「購入頻度」をそれぞれ増やすためにはどうすればいいのか、という問いに解を求めていくことになります。
それぞれの代表的な施策案をご紹介しましょう。

「客数を増やす」ための施策案は次の通りです。
□広告
□顧客が買わない理由の探求とそれを無くす取り組み
□返金保証などに代表されるリスクリバーサル
(見込客が抱える自社の商品やサービスを購入することについて背負うリスクをなくす方法)
□ジョイントベンチャー
(営業代理店活用、他社との顧客の相互紹介・共同イベント開催など、他社と組むことによる客数アップの方法)
□紹介が生まれるしくみづくり
□理想的な顧客ニーズへの提供方法の変更

続いて、「客単価アップ」につながる施策案です。
□アップセル
(既存顧客に上位の商品やサービスを提供し購入単価を増やす)
□クロスセル
(顧客の課題に隣接したお困りごとを解決できるオプション(選択肢)を増やして購入点数を増やす)
□理由がある値上げ
・外的な要素(仕入れ価格や材料費の高騰、業界全体での販売相場アップなど)による値上げ
・自社の方針(商品やサービスの品質向上、新メニュー・新商品の導入など)による値上げ

しかしながら、値上げは難しいものです。
外的な要素の場合は、その事実をしっかりと伝え、前もって顧客に伝えておく必要があります。
自社の方針による場合は、値上げ以上に商品やサービスがより顧客の価値やお困りごとの解決につながることを伝えることがポイントです。
また、商品やサービスにランクづけをし、価格帯を複数設けることも一つの方法です。

3つ目の購入頻度、いわゆるリピート増ですが、リピートしてもらえない最大の理由は「忘れるから」なんだそうです。
そのため、待つのではなく積極的に促すことが大切です。

購入頻度(リピート率)アップにつなげる施策案は次の通りです。
□電話(以外のコンタクト方法でも)でのフォロー
□季節性イベントや顧客の関心事を意識したキャンペーン、
□会員制度(定期サービス制度の導入や、フォロー・メンテナンス料の会員制度化など)
□イベント開催やメールマガジンなど継続的に関係を深められるフォロー体制

購入頻度を高めるためには、顧客に忘れられず、関係性を深めながら、身近な存在になることが大切です。
新しい顧客を集客するよりもはるかにコストが少なく済みます。
自分が顧客だったら、どんなフォローがあったらよいか、関係性を持つことができたら満足度が上がるのか、顧客の立場に立って考えてみるとよいでしょう。

②「変動費を減らす」ための検討ポイント

商品やサービスにかかる原価・変動費を減らすためにできることを考えていきましょう。
□仕入方針を明確にする
□仕入単価や外注単価の見直し
□発注量の基準を決める
□相見積もりをとる
□材料・使用料の把握と見直し
□同業者と共同仕入れを検討する
□外注の内製化ができないか
□下請け企業の技術指導と教育ができないか
□資材の有償・無償支給の組み合わせができないか
□現金仕入にして仕入価格を引き下げる
□不良やロスの削減
□メーカー直送ができないかを検討する(送料の削減)

前回のコラムでご紹介した、在庫が多く資金が眠っている時の改善ポイントもご参照ください。
https://www.sansokan.jp/mng/keiei-column/002/

③「限界利益(率)を増やす」ための検討ポイント

①と②の施策により、結果的に限界利益(率)が増えますが、もう少しできることを考えてみます。

□販売ミックスを見直す
商品やサービスごとの限界利益(率)を把握し、限界利益(率)のよいものの売上割合を向上できないかを考えていきます。

□不要な値引きをやめる
値引きが当たり前になっているのなら、値引きをしなくてもお客様が買っていただけるのか、どうなったら定価で買っていただけるのかを考えてみましょう。

④「人件費を効率よく使う」ための検討ポイント

人件費はコストですが、会社を動かす原動力でもあります。
従業員さんのやる気につながり、かつ、生産性が上がるようにコストをかけることが大切です。

□組織図を活用して仕事の棚卸を行う
仕事の棚卸や業務フローからの見直しにより、不要に仕事が重複している人が見つかったり、不要な仕事・必要な仕事を拾い出すことができます。
また、管理職や新たな仕事をつくる役割を担う人が、ルーティンワークをしていないかなど、コストの視点だけでなく、やるべき仕事をやるべき人がしているかどうか、という観点でも見直しておきたいところです。

□残業の発生原因を把握し、抑制を試みる
恒常的に残業が多ければ、その発生原因を把握し、どうしたら減らせるかを考えます。
現状の仕事で時間がいっぱいであれば、新しい仕事を任せることはできません。
振り返りと改善の時間が取れる働き方ができるよう、再設計が必要だと考えられます。

□外注化できないかを考える
必ずしも自社でしなくてもよいこと、自社でノウハウを積み上げる必要のないことについては、外注を検討してみましょう。
必要なときに必要なだけ、アウトソーシングできる方法を考えてみることも一つです。

⑤「固定費を減らす」ための検討ポイント

固定費は見直しのタイミングがなければ、増える一方です。
定期的に見直す体制を作っておきたいものです。
比較的、見直しがしやすい経費の検討のポイントをお伝えします。

□いわゆる3K(交通費・交際費・広告費)の削減
今回の新型コロナウイルスの影響による自粛で、これらの削減が余儀なくされた会社も多いと思います。
今一度、これまでかけてきたお金の意味を見直し、これから本当に必要かどうか、基準を作れないかを考えてみてはいかがでしょうか。

□生命保険・損害保険の保障内容の確認と見直し
節税を目的に生命保険に加入する会社も多いかと思います。
しかし、これらは、節税額以上にお金が会社から流出してしまう性格のものです。
会社のリスクは何か、そのリスクをカバーしうる最低限のものなのかどうかを、適時見直すことも大切です。

固定費を減らしていくには、上記も含め、なぜ、この費用を支払っているのか、会社にとってどんな意味があるのかを吟味して、聖域なく見直すことが大切です。
「思ったよりかかってしまった」固定費については、どうしたら想定通りに収まるのかを考えてみましょう。
社用車を大切に使うよう、使用前使用後のチェックリストを装備しただけで、車の修繕費が激減した会社もあります。

一方で、会社の将来のために必要な戦略的な経費の確保は、とても大切な視点です。
たとえば、従業員を育てるための教育費など、将来の原動力に必要な経費は、効率性も考えながら、確保しておきたいものです。

今、固定費についてしっかり見直しをすることができれば、経済の滞りが緩和されてきたときに、利益を生みやすい体質になっているはずです。

以上、損益計算書からみた資金繰りの改善ポイントについて、解説してきました。
業種によって、使えるもの・使えないもの・もっと深く考えないといけないものなどあるかと思いますが、各社共通していえるものを最大公約数的に集めました。
少しでもご参考になり、会社を強くし、今を乗り切る方法を切り拓いていただけたら嬉しく思います。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

名前が入ります

神佐 真由美(かんざ まゆみ)氏

角谷会計事務所 税理士
大阪産業創造館 経営相談室 経営サポーター

大学卒業後、株式会社TKCに入社。
税理士事務所を顧客としたシステム営業に従事。
多様な税理士事務所を担当する中、中小企業支援を行う税理士に憧れ、自ら税理士の資格を取得。
以降、京都と大阪に拠点のある税理士法人等に勤務し、税務・会計顧問業務のほか、創業支援、経営改善、経営計画策定業務等に携わり、経験を積む。
2013年、現在の所属である角谷会計事務所に入所。
顧客と一緒に作る「活きた経営計画」策定支援や、リアルタイムで現在の状況がわかる業績管理と毎月の巡回監査・経営助言を通して、強い会社づくりの支援を中心に活動している。
徹底した現場主義で「現場がイメージでき、行動につながってこそ、会計の意味がある」がモットー。

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