第16回 『ビジネスモデル』② ~ビジネスモデルキャンバスとは?~|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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2021.02.09公開

『ビジネスモデル』②
~ビジネスモデルキャンバスとは?~

前回のコラムでは、「ビジネスモデル」の概念や、ビジネスの創造や変革時に必要になる理由などについてお伝えしました。
今回は、ビジネスモデルをシンプルに表現し、戦略立案に活用できるフレームワーク『ビジネスモデルキャンバス』をご紹介します。

『ビジネスモデルキャンバス』とは

ビジネスモデルキャンバス

(図1 ビジネスモデルキャンバス)
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『ビジネスモデルキャンバス』は、アレックス・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール教授(スイス・ローザンヌ大学)によって開発され、2010年に『Business Model Generation』という書籍で発表されました。
(日本語訳『ビジネスモデル・ジェネレーション』<翔泳社>は2012年発行。)

『ビジネスモデルキャンバス』は、
(1)顧客セグメント(CS:Customer Segments)
(2)価値提案(VP:Value Propositions)
(3)チャネル(CH:Channels)
(4)顧客との関係(CR:Customer Relationships)
(5)収益の流れ(RS:Revenue Streams)
(6)リソース(KR:Key Resources)
(7)主要活動(KA:Key Activities)
(8)パートナー(KP:Key Partners)
(9)コスト構造(CS:Cost Structure)
というビジネスに不可欠な9つの要素を1枚のシートにまとめたフレームワークです。

現在では、規模の大小や業種を問わず、世界中のさまざまな企業や組織、学校などで活用され、ビジネスモデルを表記する標準的ツールとして認知されています。
なぜ、このように『ビジネスモデルキャンバス』は世界中に広まったのでしょうか?
特徴やその魅力をご紹介していきます。

①複雑な要素が絡み合っているビジネスの構造が、スッキリ整理でき、わかりやすくなる

『ビジネスモデルキャンバス』は、9つのブロック(要素)を埋めていくことで作成できます。
1枚のシートにまとめるため、漠然としていたビジネスが視覚化され、俯瞰できるようになります。
各要素のつながりがイメージしやすくなり、相互に与え合う影響や関係性が検証しやすくなります。
また、ビジネスを組み立てる際に、必要な要素が含まれているかを確認するチェックリストとしての役割も果たします。
実際にビジネスを営んでいる事業者の方だけでなく、経験のない創業者の方や、ビジネスについてよく知らない方にもビジネスの構造が理解しやすくなります。

②ビジネスに必要な4つの領域を網羅し、ビジネスモデルを図式化している

『ビジネスモデルキャンバス』は、「顧客と価値提案」「価値の創造」「価値の伝達」「収益・コスト構造」というビジネスに必要な4つの領域を網羅しています。

ビジネスの最大の目的は、顧客に価値をどう提供できるかです。
顧客に商品やサービスを選んでもらえないとビジネスは成り立ちません。
顧客は価値を感じることで、商品やサービスを選びます。
そのため、「価値提案」がとても重要であり、『ビジネスモデルキャンバス』では中心に置いています。
その価値をいかに創り上げ(価値創造)、顧客にどう届けるか(価値の伝達)は、ビジネスの根幹となる必要なプロセスであり、ビジネスモデルの定義でもあります。
また、その成果として、利益を得ることがビジネスの継続を意味します(収益・コスト構造)。

逆を言えば、価値創造がうまくできないと、ビジネスを実現・継続させることはできないということです。
提供価値に魅力を感じる顧客が存在しない、または一定以上いなければ、ビジネスとして魅力がない・市場性がないと言えます。
また、市場性があっても、提供価値が伝わっていなければ、顧客に選んではもらえません。
利益はその結果であり、利益が出ないとビジネスは持続できません。

『ビジネスモデルキャンバス』は、それらの一連のビジネスモデルの仕組みを表現し、ビジネスとして成り立つかどうかを確認することができます。

ビジネスモデルキャンバスの構成

(図2 ビジネスモデルキャンバスの構成)

③ビジネスの構造設計図として活用できる

建物を建てる際に「構造設計」という工程があります。
倒壊などを防ぐために建物の土台・骨組みの構造を設計し、柱や梁(はり)の性能・形状・配置などを決めていく業務です。
その時に作る図面を構造設計図と呼びます。
ビジネスも建築と同じように、その構造が脆ければ崩れてしまい、維持することができません。
ビジネスにおける設計図として活用できるのが『ビジネスモデルキャンバス』です。

『ビジネスモデルキャンバス』を構成する9つの要素は、ビジネスにおいて必須の要素です。
また、それだけでなく、互いに関連づいた役割があります
それぞれが独立しているのではなく、互いに関係し、影響を与え合っています。
その関係性(構造)が、上手く作用すれば成長方向に、何かのバランスが崩れると衰退方向に、ビジネスの現象として表れてきます。
“現象の裏には構造がある”ということを『ビジネスモデルキャンバス』で理解することができます。
ビジネスモデルの設計には、構成要素間の関係性を把握し、ストーリーとして組み立てられるかどうか、矛盾がないかなどを意識して、組み立てていくことが必要です。
それを意識して行えるようになると、さらなるビジネスの進化を設計する時にも役立ちます。

④仮説と検証が行いやすい

『ビジネスモデルキャンバス』は9つのブロックを埋めるだけですので、あまり時間を要さず作成ができます。
作成する時には、付箋を貼付して作成していきましょう。
1枚の付箋に一要素記載し、貼付していきます。
何度でも貼り直し、書き直しができます。
また、ビジネスプランを策定する前に、『ビジネスモデルキャンバス』を作成することもお勧めです。
ビジネスプランでは、詳細なところまで策定するため、根本からやり直しが必要となった際は、大変な作業になります。
ビジネスプランを策定する前に、いろいろなビジネスモデルを考え、仮説と検証を繰り返すことで、精度を高めていくことができます。

⑤さまざまな場面で活用できるツール

『ビジネスモデルキャンバス』はさまざまな場面で活用することができます。
これまでの説明では、既存ビジネスの現状把握や課題解決策の検討、新規事業立ち上げの検討、商品開発設計などでの活用をイメージされた方も多いでしょう。
『ビジネスモデルキャンバス』はひとりでも複数人数のチームでも作成できるため、活用の仕方により、その効果が広がります。
例えば、複数人数のチームで作成することで、メンバー間での意思合わせやアイデア・価値観の共有ができます。
視覚化することにより誤解を生みづらく、共通認識するのに役立ち、組織活性にもつながります。
また、お客さまとの商談時のメモ、自分自身の考えの整理などにも使えます。
さまざまなビジネスシーンで役立つツールです。

以上、『ビジネスモデルキャンバス』の特徴や魅力をお伝えしました。
次回は『ビジネスモデルキャンバス』の各構成要素の説明や、作成の仕方・ポイントなど、作成・使用いただくためのより具体的な内容をご紹介します。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

大西 眞由美(おおにし まゆみ)氏

大西 眞由美(おおにし まゆみ)氏

 

有限会社グランレーヴ 代表取締役
中小企業診断士
大阪産業創造館 経営相談室 経営サポーター

日用品メーカー、製薬メーカーのマーケティング部門において、商品企画開発や商品育成を約15年間担当する。
独立後は、その経験や中小企業診断士の資格を活かし、製造業・小売業・サービス業を中心に、ビジネスモデルデザイン・事業戦略策定、新製品・新規事業開発等の支援を通じて、「未来の持続可能な成長をめざす"経営づくり"」をサポートしている。

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