第2回 『資金繰り』改善①~お金の回転が滞る原因と貸借対照表から見る改善ポイント~|経営事典|マネジメントNavi|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

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経営事典

2020.5.26公開

『資金繰り』改善①
~お金の回転が滞る原因と貸借対照表から見る改善ポイント~

新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの企業が事業の休業や縮小を余儀なくされています。
このような状況下では、いつも以上に資金状況の把握や資金繰り対策が重要になっていきます。
今回は、こういうときだからこそ見直したい、資金繰り改善のポイントについて解説します。

有事はもちろん、平時から資金繰りを予測すべき3つの理由

まず、なぜ資金繰りを管理し、見通しをつけなければならないかをお伝えします。
改善ポイントをお知りになりたい方はスクロールして先にお進みください。

1)資金は企業の生命線である
赤字であっても企業は倒産しません。
一方で、黒字であっても資金が続かなければ、企業は存続できなくなります。
先々を見据えて、打てる手を考え、実行していく必要があります。

2)新規開拓・新規事業・イノベーションには時間と資金が必要
新商品づくりやサービスの構築、新市場への進出や顧客層へのアプローチなど、新たな取り組みには、初期投資や軌道に乗るまでのタイムラグもあり、資金が必要なことがほとんどです。
資金繰りを把握せず、いつ、どのくらいのお金が使えるかわからない状況では、新しい取り組みをする目途が立ちにくく、前向きな選択がしづらくなります。
次の選択をするためにも、資金繰りを管理し、予測しておきたいものです。

3)資金繰りは、経営者に前を向く勇気を与えるもの
「資金繰り」と聞くとどんなイメージでしょうか。
資金繰りというと、「大変」「月末」「よくわからない」「乗り越えなければ」と、人によって様々な印象や定義があります。
伸びている会社の経営者が持っている資金繰りの定義は、「経営者に勇気を与えられるもの」だそうです。
やりたいことができるたびに、資金繰り表の予測を更新。
「これでいける!」と事業に打ち込むために資金繰り表を活用するそうです。
今のようなコロナ禍でも、「最悪の状況」を資金繰り表でリアルに捉え、できる対策をして行動すること。
群を抜いて伸びていく会社の共通点かもしれませんね。

現在、大変な状況にいらっしゃる方が多いと思います。
しかしながら、資金繰りに目途をつけ、資金繰りを良くする体制をつくり、前向きに事業に取り組む環境をつくっていくことが大切です。
まずは、今から半年~1年の資金繰りを見通し、持ちこたえられる資金を緊急融資などで準備をすることが必要です。
そして、資金繰りに見通しをつけ、前向きに事業に取り組める「気持ち」と「時間」をつくりましょう。

資金繰り改善のポイント

今後の資金繰りの改善につなげていただくために、ポイントを4つにまとめました。

資金が上手く回っていない会社によく見られる傾向状況として、
1)在庫が多く、資金が眠っている
2)売掛金の回収が遅い、買掛金の支払が早い
3)設備投資が過剰ぎみになり、稼働していない遊休資産がある
4)赤字である、または、キャッシュフローが借入金の返済に追いついていない
といったことがあります。
今回は、このうち1)~3)について、改善ポイントを解説します。

1)在庫が多く、資金が眠っている
在庫が滞留し、お金に換えることができていないため資金繰りを悪化させているケースです。
在庫を買うのもお金ですから、それを売って現金化しなければ、在庫購入資金の分だけ、資金は減っていることになります。

原因として、
・いつか売れるかもしれないと思い保管しているが滞留している
・在庫管理ができていないので、行き当たりばったりの発注をしてしまう
・不良在庫(売れない在庫)を倉庫の奥にしまってしまい、管理コストがかかる
・在庫が増え、倉庫を大きくしてしまっている
などが挙げられます。

すぐに取り組める改善のポイントとしては、
□ 何がどのくらい在庫としてあるのか見える化する(把握する)
□ 不良在庫は思い切って処分する
□ 仕入から販売までのリードタイムを短縮する
□ 見積りにより購入先を検討する(3社は見積りがあると望ましい)
□ 毎月実地棚卸を行い、適正在庫を決めて維持する
といったことが挙げられます。
不良在庫は思い切って処分してしまった方が、「廃棄損」として費用化できて、節税になるケースもあります。

2)売掛金の回収が遅い、買掛金の支払が早い
売掛金の入金タイミングと買掛金の支払タイミングも資金繰りに大きく影響します。
売上の入金よりも、仕入資金の支払いが早いと、その分手元からお金がなくなります。
相手方との関係性が影響するので、すぐには改善が難しいこともあるかもしれません。
しかし、社長だけでなく営業担当や調達担当が意識して改善できることもあります。

売掛金回収・買掛金支払のタイミングで資金が滞りやすい原因として、
・売上至上主義で営業担当者が回収まで意識していない
(回収して会社にお金が入るまでを、仕事の完了としていない)
・得意先の与信管理をしていない
・回収までの期間が長くなっているが、気にしていない
・支払先の要望のまま、早く支払っている(支払の取決めをあらかじめしていない)
などが考えられます。

改善ポイントは次の通りです。
□ 回収基準を明確にし、周知する
□ 長期的な案件があれば、着手・中間金を前受できないか交渉する
□ 入金が遅れたら、すぐに連絡する「うるさい取引先」になる
□ 営業担当者には回収まで意識させる
□ 得意先の与信管理と売上コントロールを行う
□ 支払先の締日、支払日を明確にし、請求書到着期限を厳守する
□ 仕入先の締日をうまく利用し、締日後に納入するようにする

3)設備投資が過剰ぎみになり、稼働していない遊休資産がある
過剰な設備投資を行っていたり、稼働がよくない設備、使っていないリゾート施設やゴルフ会員権があるなど、お金が固定化して眠っている状況です。

よく見られる原因には、
・長期の設備を短期借入により購入したため、使用期間よりも返済期間が短くなっている
・使っていない遊休資産がある
・稼働が落ちている、または想定より稼働できていない機械がある
・減価償却分の収益に貢献していない
といったことが挙げられます。

改善ポイントは次の通りです。
□ 投資額+追加費用分の収益獲得に貢献しているかを検証する
□ 新規設備投資については、費用対効果の検討をする
(設備代金を何年で回収できるかをよく検討する)
□ 中古資産への代替を検討する
□ 使わない資産については早期に売却をするか、不動産なら他人への賃貸を検討する
□ リースを検討する
(多額の支出を防げ、借入の枠を使わないメリットがありますが、割高になることも多いです)
□ 無用な資産を持たない
(節税重視ではなく、手元に現金を残し、バランスを考えることが重要です)

余談ですが、いわゆる老舗企業は、遊休資産を賃貸し、営業外収益を得ている会社の割合が多いそうです。
本業に波があっても、ある程度のベース収入を得ることができるため、顧客を大切にすることを優先して変化に対応しやすいのではないかと、『百年続く企業の条件(帝国データバンク著 朝日新書)』では述べられています。

簡単なことではないかもしれませんが、今一度社内の設備を見直し、収益に貢献していないものは、売却して現金化する、スペースを空ける、賃貸するなどで収入をつくるなど工夫ができないか、検討してもよいかもしれません。

簡単ですが、資金繰り改善のチェックポイントをまとめましたので、ご活用ください。資金繰り改善チェックシート

4)の「赤字である、または、キャッシュフローが借入金の返済に追いついていない」場合の原因とチェックポイントについては、別の機会に解説します。

↓今回のコラムを書いたのはこの方↓

名前が入ります

神佐 真由美(かんざ まゆみ)氏

角谷会計事務所 税理士
大阪産業創造館 経営相談室 経営サポーター

大学卒業後、株式会社TKCに入社。
税理士事務所を顧客としたシステム営業に従事。
多様な税理士事務所を担当する中、中小企業支援を行う税理士に憧れ、自ら税理士の資格を取得。
以降、京都と大阪に拠点のある税理士法人等に勤務し、税務・会計顧問業務のほか、創業支援、経営改善、経営計画策定業務等に携わり、経験を積む。
2013年、現在の所属である角谷会計事務所に入所。
顧客と一緒に作る「活きた経営計画」策定支援や、リアルタイムで現在の状況がわかる業績管理と毎月の巡回監査・経営助言を通して、強い会社づくりの支援を中心に活動している。
徹底した現場主義で「現場がイメージでき、行動につながってこそ、会計の意味がある」がモットー。

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