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中国企業に製品を輸出することになりました。売買契約書を作成することになりましたが,具体的にどのような点に注意をして売買契約書を作成すれば良いでしょうか。
通常の売買契約書での注意点に加え,準拠法や仲裁条項について注意する必要があります。
まず,実際の製品を直接中国企業と売買するのか,国内の商社や貿易会社等を介して製品を売買するかで,対応が異なってきます。
商社や貿易会社等を介して製品を売買する場合,当該製品の売買は通常の日本国内の売買契約と同様に考える必要があります。売買契約書において,商品の個数,品質,価格等の特定は当然のこと,売り手であれば,代金の受領時期,所有権の移転時期,代金未払のリスクヘッジ等,買い手であれば,商品に瑕疵がある場合の対応,代金支払い時期,所有権の移転時期等について一般的に注意する必要があります。
中国企業と直接製品の売買をおこなう場合,上記の点以外にも注意すべき点があります。
まず,準拠法の問題です。中国,日本ともにウィーン国際物品売買契約条約(以下「CISG」と言います)を批准しているため,契約書に何も規定がなければ,CISGの定める売買契約の成立並びに売買契約から生ずる売主及び買主の権利義務についてはCISGが適用されることになります。もっとも所有権の移転等についてはCISGではカバーしていないことから,契約書で別途定める必要があり,これらの条項の解釈のために,準拠法を定めておく必要があります。もし,日本法を準拠法として定めておけば,CISGでカバーされない事項については,国内取引で適用される日本法が適用されることになります。一方,中国法を準拠法と定めていれば,CISGでカバーされない事項について中国法が適用されることになります。いずれの法律を準拠法とするかは取引における力関係によります。
その他,注意すべき点は,仲裁についての定めです。例えば,中国企業が製品代金を支払ってこない場合,日本で判決を取っても,中国での強制執行が困難です。しかし,日本も中国も仲裁に関するニューヨーク条約に加盟していることから,お互いの仲裁判断を相手国で執行することが可能です。そこで,売買契約書には仲裁条項を入れるのが一般的です。
仲裁機関としては,日本には日本商事仲裁協会があります。一方,中国には多数の仲裁機関が存在しますが,実務的には中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)が選択されるケースが多いといわれています。