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当社は特殊な技術をもった日本の製造業者です。この度、中国での販売ルートを拡大するため、中国企業と合弁会社を設立することになりました。中国で合弁会社を設立する際の流れと留意点を教えて下さい。
設立自体は容易になっていますが、合弁契約書の内容や近年の法改正に注意が必要です。
1.合弁会社の設立手続
外資企業の中国における会社設立について、過去には、商務部門の許可を得た上で、工商部門の登記を行うことが求められていました(許可主義)。
しかし、2016年以降の法改正により、原則届出制(ネガティブリストに該当する場合は許可制)、ウェブサイトによる登記申請、工商部門への登記申請と同時に商務部門への設立届出が可能になるなど、会社設立の手続はスピード化・簡素化されています。
現在では、制限業種に該当し、事前許可を要する例外的な場合を除き、合弁会社の設立自体に困難を伴うケースはそれほど多くないといえるでしょう。
2.合弁契約締結時の注意点
出資比率、董事の人数配分・董事会決議事項及び総経理の選任、経営範囲、現物出資や利益配分に関する取り決め、デッドロック時の対応、増資・撤退・持分譲渡に関する合意等、多数の留意点があります。
例えば、撤退を検討する場合、中国では外資企業の破産は困難であり、解散清算にも相当の期間や費用を要する場合があります。そこで、持分譲渡を選択することが多いのですが、中国側から低価格での持分譲渡を求められるなどのトラブルが想定されます。
このようなリスクを避けるために、持分譲渡を求めることができる場合やその方法、持分譲渡代金の定め方についても、合弁契約書に記載しておくべきといえます。
3.中国「会社法」改正による影響
外商投資法(2020年1月1日施行)により、現在、外商投資企業のガバナンスは、中国国内企業と同様、中国「会社法」により規律されています(例えば、合弁企業の最高決定機関について、以前はいわゆる外資三法に基づき董事会とされていましたが、現在では会社法に基づき株主会とされています)。
中国企業との合弁会社設立にあたっては、中国「会社法」が大幅に改正されている点に注意が必要です(2024年7月1日施行)。合弁会社については、①資本金の払込期限の厳格化、②持分譲渡の容易化、③従業員代表董事の選任などに注意を要します。
中国の法律やルールの変化は日本に比べて非常に速いため、中国企業との合弁会社設立にあたっては、弁護士への相談も検討すべきでしょう。
(回答日:2024年10月15日)