今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
東南アジア子会社で生産する品目を米国客先に輸出するにあたり、日本の本社が
商流に介在する「仲介貿易」の取引形態を考えています。留意点を教えてください。
貿易書類やコミュニケーション上、営業秘密情報の秘匿、情報管理が重要です。
仲介貿易とは:
・外国相互間の貨物の移動に伴う売買契約であり、
・買受(輸入)国からの代金の受け取り、荷送り(輸出)国に対する代金の支払いの
双方があるもの
と一般的に解釈できます。
日本本社が仲介者となり、東南アジア子会社から仕入れ、米国客先に販売しますが
契約や支払い行為(商流/伝票処理)を行うものであり、製品の出荷(物流)は東南アジアから米国への直送となります。
子会社工場を活用する背景は様々ですが、子会社が買主と直接取引せず、日本本社が
介在して仲介貿易を行う背景例として:
・子会社に海外営業/事業する体制が十分備わっていない。
・子会社で生産する輸出製品の開発、知財、金型等に日本本社の権利が介在する。
・本社に買主と取引実績/信頼関係がある、等。
つまり本社が商流に介在する何らかの理由・合理性があり、その対価として仲介マージンを得るという点が重要です。
仲介貿易には実務上注意すべき事項が多くありますが、「営業秘密情報」の秘匿、管理は
特に重要となります。
・仕入先(製造工場)の名前や住所【買主への漏洩リスク】
・海外買主の名前や住所【仕入れ先への漏洩リスク】
・仕入れや販売に伴う価格情報【買主/仕入れ先への漏洩リスク】、他
仕入先や買主が、仲介者を外して直接取引を画策したり、仲介者マージンの判明により
値上げ/値下げを要求してくるかもしれません。
これを防ぐには、仕入れ、販売それぞれ独立した別契約を締結し、仲介者の法的権利を
確保した上で、仕入価格の買主への漏洩、販売価格の仕入先への漏洩など、情報を厳しく管理する必要があります。
・商業送り状
・船荷証券、海上運送状
・保険証券
・原産地証明書、その他書類
これら貿易書類には上述した営業秘密情報が記載されており、子会社側から入手した
書類を、そのまま買主に送付すると情報漏洩となるので、本社で切り替え(スイッチング)を行います。ただ書類によっては原本性が必要で切り替えが困難なケースもあります。また、仕入れ、販売、それぞれのインコタームズ(貿易条件)の関係にも留意が必要です。
これら情報漏洩リスクへの対応は、本社と仕入先間/本社と買主間の関係(秘匿必要度合に影響)や取引内容により変わりますので、必要に応じ専門家に相談されることをお勧めします。尚、仲介貿易は、物流が日本を経由しなくとも、日本の安全保障貿易管理の対象であり、
経済産業大臣の事前許可が必要になる場合があるので注意が必要です。