今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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顧客とのトラブルが絶えない従業員に対し退職勧奨をしたところ、当該従業員から「『会社都合』による退職としてくれるなら、退職に応じてもよい。」との申出がありました。この申出に応じるべきでしょうか。
「会社都合」による退職とする際のリスクに注意する必要があります。
雇用保険の基本手当(一般に「失業手当」や「失業給付金」などと呼ばれたりします。)を受給する際に、企業を退職した理由が「会社都合」によるものか「自己都合」によるものかが問題となります。
「会社都合」による退職とは、典型的には破産による解雇など、企業側の理由により退職した場合をいいます。なお、「会社都合」により退職した者とは、厳密には「特定受給資格者」又は「特定理由離職者」と定義されており、その範囲は多岐にわたります。詳しくは、特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準をご参照ください。
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000147318.pdf)他方、「自己都合」による退職とは、典型的には転職や大学院への進学など、従業員側の都合により退職する場合をいいます(厳密には「一般受給資格者」と定義されています。)。
「会社都合」による退職の場合は、雇用保険の基本手当の支給に関し、おおむね以下のとおり従業員にとって有利な内容となっています。
質問の場合のように退職勧奨をした際、従業員が退職をする条件に「会社都合」による退職を求めることがあります。企業としても「会社都合」による退職による金銭の出捐がないため、これに応じているケースも少なくありません。
しかし、トライアル雇用助成金などの助成金において、支給要件として所定の期間に事業者都合による退職がないこと(又は一定人数以下であること)とされている場合があります。このため、仮に当該従業員を「会社都合」による退職としてしまうと、本来であれば受給できた助成金が受給できなくなってしまう場合もあります。
また、従業員から「会社都合」による退職が解雇にあたるとして、最大30日分の平均賃金に相当する解雇予告手当(労働基準法第20条第1項)の支払いを請求されるおそれもあります。
企業にとって思わぬ負担となってしまうことがないように、「会社都合退職」とする際のリスクに注意する必要があるといえるでしょう。