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弊社製品を中国・台湾に継続的に販売することになりました。これまでの個別取引では契約書を作成していませんでしたが、このまま進めていいでしょうか。また、契約書を作成する場合の「準拠法」と「紛争解決方法」について、注意点を教えてください。
生じ得るトラブルを考慮して、準拠法と紛争解決方法を定める必要があります。
1.契約書を作成しない場合
契約書で準拠法(取引にどの国の法律が適用されるか)を指定しない場合、中国との取引ではウィーン売買条約が適用され、想定外の責任を負う可能性があります(例えば、日本法と異なり、売主は契約不適合について2年間の責任を負います)。
台湾との取引ではウィーン売買条約は適用されないと考えられますが、契約書で準拠法を指定していない以上、どの国の法律が適用されるか不透明な問題は残ります。
2.国内契約書を流用した場合
日本企業にとっては、国内契約書を流用して「準拠法は日本法とする。大阪地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」のように定めることが有利とも思えます。
もっとも、日本国内裁判所で勝訴判決を得たとしても、その判決をもって中国・台湾において強制執行をすることはできないと考えられています。
そうすると、取引相手が日本国内に財産を保有している(日本で強制執行できる)場合を除き、執行不能に陥ってしまうという問題が残ります。
3.相手方国で訴訟を行う場合
中国・台湾での訴訟を選択する場合、適切な弁護士を選任できるか、地方保護主義、証拠提出の煩雑さ(例えば、中国の訴訟手続において日本で作成された資料を証拠提出する場合、在日中国大使館の認証を経る必要があります。)などの問題が生じます。
これらの問題を踏まえ、契約書で仲裁手続(当事者が選任する第三者(例えば、一般社団法人日本商事仲裁協会)が審理判断し、当事者がその判断に終局的に服する旨を合意する手続)を選択することも検討できます。
4.仲裁手続を選択する場合
仲裁判断に執行力が認められる、審理が非公開である、上訴がなく早期解決を見込めるという利点があります。もっとも、仲裁人報酬や仲裁機関の管理費用を要する、仲裁手続の長期化(仲裁の訴訟化)が指摘されているという問題もあります。
また、訴訟の場合と異なり、適用される仲裁規則、仲裁地、使用言語について合意することができるため、契約交渉の際に譲れないポイントを決めておくべきです。
なお、中国仲裁法では、日本仲裁法と異なり、仲裁合意には「選定する仲裁委員会」が含まれなければならないとされている点にも留意が必要です。