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週5日勤務、所定労働時間が12時00分〜21時00分(休憩1時間で8時間勤務)、で、月額20万円(うち固定残業代30時間分として3万円)で、30時間を超えた時間外労働の手当はきちんと支払っていますが、最低賃金法に触れるのではないかと従業員から指摘がありました。計算の根拠を教えてください。なお2017年の年間休日は110日です。
固定残業代には割増賃金も含めてください。
1.まず、固定残業代の対象となる時間外労働が何かを雇用契約書や就業規則に定めにより労使間で明確にします。対象となり得るのは次の3つです。「時間外労働」「深夜労働」「休日労働」です。この事例では「時間外労働」に限るものとして考えます。
2.1ヶ月の平均所定労働時間を算出します。
1ヶ月の平均所定労働時間
=(年の暦日数-年間休日)÷12×1日の所定労働時間
=(365-110)÷12×8
=170時間
3.基本給と固定残業代部分を分けて考えます。
基本給(ここでは通勤手当を含まないものとして考えます)は、
20万円-3万円=17万円です。
4.基本給が最低賃金以上であることを確認します。
月額の基本給÷1ヶ月平均所定労働時間
=17万円÷170
=1,000円
これは大阪府の最低賃金883円(2017年7月現在)以上で合法です。
5.固定残業代が最低賃金以上であることを確認します。
固定残業時間は、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えるので割増賃金(1.25倍)で計算します。
固定残業代÷(固定残業時間×1.25)
=30,000÷(30×1.25)
=800円
これは、大阪府の最低賃金883円(2017年7月現在)を下回るので違法です。
6.固定残業代を合法にするために、最低賃金から逆算してみます。
固定残業時間=固定残業代÷(大阪府最低賃金×1.25)
=30,000÷(883×1.25)
≒27時間(小数点以下切り捨て)
理論上は合法ですが、21時までは時給1,000円である一方で、21時以降の時給は883円ですと従業員のモチベーション低下につながりかねません。
やはり、時給1,000円として、固定残業時間を考える方が望ましいと考えます。
固定残業時間=固定残業代÷(1,000円×1.25)
=30,000÷(1,000×1.25)
=24時間
今回のケースでは固定残業時間を24時間にされることをお勧めします。
7.残業する時間帯について
さらに、22時00分以降の時間外労働については、「深夜労働」に対応する割増賃金の対象になりますので、6で適法に修正した固定残業時間24時間を超えていなくても、別途25%の深夜割増賃金を支払う必要があることに留意してください。
8.固定残業の条件が決まれば、雇用契約で固定残業の金額と固定残業時間数を明記し、給与支給時には固定残業に含まれる時間外労働の時間数と、固定残業を超える「時間外労働」「深夜労働」「休日労働」の時間数を明らかにして、割増賃金を支給してください。