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現在、中小企業の経営者として従業員にAIを活用させていますが、法的責任を負うことがないように、気を付けておくべき知的財産のリスクと対策について教えて下さい。
以下の4点に注目しながらリスクを正しく理解し、適切な管理とルールづくりが必要です。
生成AIの普及により、文章、画像、音楽、プログラムコードなどを誰でも簡単に作成できる時代になりました。しかし、こうした利便性の一方で、知的財産(IP)に関するリスクも増大しており、利用者は適切な知識と対策を持って活用することが求められます。
① まず重要なリスクは、「著作権侵害」の可能性です。生成AIは、大量の既存データを学習しており、その中には著作権で保護された作品も含まれている可能性があります。そのため、AIが生成したコンテンツに、他者の著作物と酷似した表現が含まれることがあり、無断使用によって権利侵害と見なされるおそれがあります。特に、商用利用を前提とする場合には、生成物の出所や類似性について慎重に検討する必要があります。
② 次に挙げられるのが、「生成物の権利の所在が不明確」な点です。AIが作成したコンテンツの著作権が誰にあるのかは、国やサービスごとに対応が異なります。たとえば、日本では現行法上、AIが自動生成したコンテンツには著作権が認められない可能性がありますが、生成に人の創作的関与が認められる場合には、著作権が発生することもあります。このようなグレーゾーンを理解し、契約や社内ルールでの整理が必要です。
③ さらに、「学習データの使用に関する問題」もあります。自社が提供した情報が、無断でAIの学習に使われるリスクや、逆にAIから自社の機密情報が漏洩するリスクもあるため、機密情報を含むデータは生成AIに入力しないことが基本です。
対策としては、まず利用する生成AIの利用規約をしっかり確認することが第一歩です。生成物の利用範囲、著作権の帰属、免責事項などを把握し、不明な点は専門家に相談すべきです。また、生成物を商用利用する際には、著作権クリアランス(類似調査)を実施することで、リスクを回避できます。
④ 最後に、社内でのガイドラインを整備し、社員教育を通じて適切な利用を徹底することも重要です。
生成AIは強力なツールである一方、使い方を誤れば大きな法的トラブルを招く可能性があります。知的財産の観点からリスクを正しく理解し、適切な管理とルールづくりを行うことが、安心してAIを活用する第一歩です。
(回答日:2025年10月6日)