今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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取引先に商品を納品し、翌月に請求書を送付して商品代金を支払ってもらう予定でしたが、商品代金を支払ってもらう前に取引先が倒産してしまいました。弊社の売掛金はどうなるのでしょうか?
他の業者よりも優先して売掛金の回収を図ることができる可能性があります。
破産手続が開始されると、原則として個別に売掛金等の債権の回収を図ることは禁止され、裁判所に債権届出を行い、配当額は債権額に応じて按分比例して決定されます。破産する会社に潤沢な資産があることは極めて稀ですから、配当を全く受けることができない又は配当を受けることができたとしても債権額と比較すると配当額は僅少な額になる場合がほとんどです。
しかしながら、債権の性質が貴社のように商品を販売したことによる売掛金である場合は、動産売買先取特権(民法第311条第5号)が成立し、商品の代価及び利息に関して、その「商品」から他の債権者に優先して弁済を受けることができ(同法322条)、破産手続が開始した場合においても別除権として扱われ(破産法第2条第10号)、破産手続によらずに行使することができます(同法第65条第1項)。
もっとも、取引先の有するいかなる財産からでも優先的に債権回収を図ることができるわけではなく、あくまで「商品」そのもの及び取引先が商品を転売したことによって発生した「商品の売掛金」からのみとなります。
つまり、取引先の倉庫等に「商品」が残っている場合は、「商品」そのものを差押等して債権回収を図ることとなり、取引先が既に「商品」を転売しており、代金の回収が未了である場合は、取引先が代金を受け取る権利を差押えして、御社が転売先から代金を受け取って債権回収を図ることとなります。
このように動産売買先取特権は、取引先が破産をした場合でも他の債権者に先駆けて債権を回収できる可能性がある、非常に強力な権利です。
ただし、いざ差押えをする際には、差押えをする商品と自分が販売した商品が同一であることを証明しなければならず、転売代金を差押えるためには、転売先が代金を支払う前に差押をしなくてはならないため、極めて迅速な対応が求められます。
そのため、商品を販売した取引先が倒産した場合は、すみやかに弁護士にご相談していただくことをお薦めします。
(回答日:2024年8月29日)