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取引先に商品を納品しましたが代金が支払われません。裁判をして売掛金を回収しようと考えていますが、財産隠しが行われる危険があり、勝訴しても回収が出来ないかもしれません。どうしたらいいでしょうか?
取引先の財産を仮差押えして、財産処分をできなくする手段があります。
民事訴訟を提起してから判決が下されるまでには、通常、一定の期間を要します。その間に債務者が財産を逸出させる等をした場合は、債権者がせっかく勝訴判決を得たにもかかわらず、金銭を回収できなくなる事態が生じてしまいます。そういった事態を防ぐために、民事保全法は、裁判所が暫定的に債務者の財産を差し押さえて処分ができないようにしておくことで、債権者の将来の権利実現を容易にする「仮差押」という手続きを用意しています。
そのため、債務者に対して、債権を有しているものの、判決を得るまでの間に権利実現が困難となる恐れがある場合は、債務者の財産を仮差押えしてから、民事訴訟を提起することを検討します。
しかしながら、どんな場合でも「仮差押」手続きが利用できるというわけではありません。裁判所に「仮差押命令」を出してもらうためには、①金銭の支払いを目的とする債権であること、②保全の必要があること、の2つの要件が必要です。①については、売買代金請求権、貸金請求権、請負代金請求権等が代表的です。②の保全の必要性は、早急に債務者の財産を保全しておかなければ権利実現が困難となる理由のことです。
また、「仮差押命令」は通常の裁判と異なり、債務者の言い分を聞くことなく、短い期間で発令の可否を判断します。そのため、「仮差押命令」が発令されたとしても、のちの裁判で敗訴をする可能性があります。その場合、「仮差押命令」によって権利を制限されたことによる債務者の損害を賠償しなければなりません。そのため、「仮差押命令」の発令の条件として、債務者が負う可能性のある損害を填補するに足る担保の提供が求められます。担保の金額は、被保全権利の種類や金額、仮差押対象財産の種類によって異なります。担保は裁判で勝訴すれば返還を受けることができますが、勝訴判決が得られる見込みがあるか否かを慎重に判断して仮差押を求める必要があります。