今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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農業を営んでいます。先日大きな地震が発生し、近くの工場からダイオキシンが流出したことが報道され、農作物が全く売れないという風評被害にあいました。損害賠償を請求できるでしょうか。
因果関係等の立証いかんにより損害賠償ができることもあります。
風評被害とは根拠のない噂や誤解が広がることによって、企業が不当な損害を被ることをいいます。風評被害によって製品の売上が大きく落ち込むなど企業が深刻な損害を被った場合、不法行為による損害賠償請求(民法第709条)を行うことが考えられます。
風評被害による損害賠償としては、①事故の原因を作り出したものに対する請求と②事故の報道をした報道機関に対する請求が考えられます。
①の場合は、事故によって損害が生じたのかという因果関係が争点となります。例えば、一般
の消費者が、ダイオキシン流出の報道に接すれば、一時的にせよ、引地川近くで採れた海産物
を買うことを控えたり、引地川近くで行われる観光地引き網への参加を見合わせたりすること
は、消費者の心理として極めて高い蓋然性をもって予想されるというべきであるとして、ダイ
オキシン流出事故の報道により、付近の漁業者に生じた観光地引き網の予約キャンセル、市場
からのしらす等の引き取り拒否、しらす等の販売額の減少、しらす鰻の漁の中止等による営業
損害を認めた裁判例(横浜地判平成18年7月27日判タ1254号232頁)などがありま
す。この裁判例からも明らかなように損害賠償を請求する場合は丁寧な因果関係の主張・立証
が求められます。
②の場合は、報道機関に対し企業の名誉が毀損されたとして損害賠償を請求することになりま
す。この場合は、因果関係のほか報道の内容が真実であるかどうか、仮に真実でないとしても
真実と信じるに足りる相当な理由があるかがしばしば争点となります。例えばダイオキシンに
よる野菜の汚染について放送を行った報道機関に対して「せん茶」の測定値が含まれていたこ
と、採取場所不明のわずか1検体の白菜の結果をもって放送したことなどから報道機関の真実
性の証明がなされていないとされた裁判例(最判平成15年10月16日民集57巻9号10
75頁)があります。
ご質問の事案についても、いずれの請求をするとしても、証拠の整理、分析を行い請求の可否を十分に検討する必要があるといえます。
(回答日:2026年2月27日)