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当社は飲食店の経営と惣菜の製造を行っていますが,「当社が製造した惣菜を食べた」という顧客から,「弁当のおかずを食べてお腹を壊した」という連絡がありました。
今後,どのような対応をすれば良いでしょうか。
事実確認と原因分析の結果を踏まえ,適切な処理と安全管理の強化を行うべきです。
1.安全管理の重要性
製品や食品(以下「食品等」といいます)の安全は当然の前提であり,安全への疑いは,企業の存続を揺るがす重大なリスクといえます。特に,昨今の「食の安全を脅かす不祥事」(食中毒,偽装表示,異物混入,期限切れ等)により,安全管理の重要性が改めて示されています。
2.クレームを受けた際の基本的対応
(1) 事実の確認
早急に,①購入時期,②飲食・保管状況,③問題発生状況等を調査すべきです。また,クレームを申し立てた者に損害が生じている場合は,④その損害額も調査すべきです。ここで注意すべきは,事実関係が明らかではない段階で,容易に支払いを約束しないことです。
なお,調査方法は,関係者の聴取りのほか,食品等が現存する場合には現物を確認します。
(2) 原因の分析
原因分析としては,どのような不具合がいかに作用して問題が生じたのかという科学的分析と,製造物責任法の「欠陥」や民法の債務不履行等に該当するかという法律的分析を行います。この後者の分析については,弁護士等と連携して行うことになります。
(3)事実の開示・公表
「不祥事の隠蔽」とみられないためにも,調査により貴社の責任が明らかとなった場合には,速やかに関係者に連絡すべきです。特に,身体に危険を及ぼし得るときは,被害拡大を防ぐために,速やかにホームページ等で情報を公表することが考えられます。その際に食品等を全て回収することが考えられます。ただし,個々の事案によって開示や公表の内容・時期・方法等は異なります。
(4) 損害の賠償
惣菜は「製造又は加工された動産」(製造物2条1項)に該当しますので,通常有すべき安全性を欠いている場合には,それにより損害を受けた者に対し,貴社は損害賠償義務を負うことになります。
また,惣菜の問題について貴社に過失があれば,債務不履行や不法行為に基づく損害賠償義務を負うことになります。
これらの点は,訴訟手続も想定した上で準備する必要があります。
3.再発の防止と今後の活用
再発を防止し,クレーム処理をチャンスに変えるためには,安全管理体制を強化することが重要です。そのためには,全従業員の安全意識を高めることが不可欠です。
また,HACCP(ハサップ)の導入を目指すことも考えられます。HACCPは,全工程において汚染等の危害を分析し,危害防止に繋がる重要な工程を継続的に監視・記録するシステムのことです。この導入に向けては,HACCP支援法(食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法)による援助が用意されており,近年その支援対象が拡大されています。詳しくは,農林水産省ホームページをご参照ください。
(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/haccp/index.html)