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最近、仕入先から値上げの通告があり、また、電気代なども値上がりしています。全体的にコスト上昇が著しく、このままでは赤字になってしまうのではと心配です。何から見直しをするべきでしょうか。
自社の利益構造を把握したうえで、影響を数字で捉え、値上げの検討をしましょう。
仕入先からの値上げ要請や電気代やガス代などの上昇により「値上げをしないといけないのだけど、どこまでできるか・・・」と、値上げをしたいけども、相手のあることだし難しいとお考えの経営者も多いと思います。
昨今のコスト上昇が企業経営に与える大きな影響は、企業の利益構造が大きく変わってしまう、ということです。
売上原価も販売管理費も上昇する、ということですから、売上原価が高くなって、粗利率は低くなりますし、販管費をはじめとする固定費も高くなります。
たとえば、これまでは、
100売って40の粗利が残り、
35の固定費で5の利益が残る、
という利益構造だったのが、
100売って35の粗利が残り、
37の固定費で2の赤字。
値上げをしない場合は、粗利の額が減り、固定費も高くなって、利益が減る、さらには赤字になる、こんなことが起こっています。
これからコスト上昇によりどんな影響がでるのか、数字で具体的に把握していきましょう。
(1)変動損益計算書で自社の利益構造を理解する
まずは、自社の利益構造を把握しましょう。
残念ながら決算書や試算表は、今回のようなコスト上昇の影響をシミュレーションすることに適していません。
「変動損益計算書」という管理会計の枠組みに落とし込み、自社の利益構造を把握しましょう。会社のすべての支出を、売上に比例して増減する「変動費」と、売上に関わらず増減しない「固定費」とに分けて組み替えます。
具体的な方法は、下記のFAQに記載しておりますので、ご参照ください。
帳簿をつけて試算表を出していますが、どのように経営に活かすのでしょうか。
https://www.sansokan.jp/akinai/faq/detail.san?H_FAQ_CL=0&H_FAQ_NO=1264
(2)何が、どれだけ値上げされているかを捉える
値上げされるものが多い局面では、何がどれだけ値上げになったのか、リストアップして把握することが特に必要です。
何にどのくらいのお金がかかっているかの把握をし、今回のコスト上昇で、どのくらいのコストアップになるのか、具体的な数字で把握するようにしましょう。
(3)コスト上昇により、どうなるのかを変動損益計算書でシミュレーションする
コストアップの内容が把握できたら、その内容を1)でまとめた変動損益計算書に反映させて、利益がどうなるかをシミュレーションしましょう。
例えば、材料の半分を占める金属類が3割値上げしているのであれば、変動費のうち半分が3割増、変動費全体としては15%のアップとなります。
また、電気代が4割アップしているのであれば、固定費の金額を電気代のアップ分だけ、増やして計算してみます。
その結果、値上げをしないとどのくらいの粗利が減り、固定費が増えて、経常利益がいくら減るのかが具体的な数字でわかります。
変動費・固定費の内容を確認しながら、削減できるものがないか、聖域なく検討していく必要があります。
(4)値上げをどのくらいすべきかを検討する
自社の利益構造にどのくらいの影響が出るのかを確認し、今後のコスト上昇も考慮に入れながら、どのくらいの売上が必要なのかを検討しましょう。
取引先開拓などの施策も考えられますが、変動費も固定費も上昇しているなか、まずは値上げを検討する必要があると考えます。
相手があることなので難しい交渉もあるかと思いますが、コスト上昇局面で価格を据え置くことは、必要な売上目標をさらに引き上げることになり、忙しいのに利益が残らない状況を作りかねません。
新型コロナウイルスの影響は、ウイルスの終息とともになくなりますが、コスト上昇の影響はこれから当分続くものと考えられます。さらなるコスト上昇が見込まれると考えて、売値をどうするか、上げられないのであれば、取引を増やすのか、コストのかけ方を見直すのか、会社の利益構造を見ながらの判断が重要となります。