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輸出契約交渉で海外客先から「決済通貨の米ドル建て」要求を受けました。
円以外の外貨で決済する場合の外国為替変動リスクの考え方と対策を教えてください。
外貨価格提示から、代金回収/両替までの時間の長さが重要です
日本からの輸出で米ドルなど外貨を決済通貨とした場合、外為変動リスクが売主側に発生します。「日本側の原価、利益、経費等」は原則円で発生するので、輸出代金を外貨で受取った場合、円貨に両替、充当する必要があります。ここで「見積提出時の想定レート」と「入金両替時のレート」の差によって差益や差損が発生します。
ここで重要な視点は「時間経過とリスク度合い」です。
(1) 売主が実勢レートを参考にして、円貨を外貨建てにし、提示した時点
(2) 条件交渉後受注し、外貨建契約金額(決済額)が決まった時点
(3) 契約条件に基づき、輸出代金を外貨で回収し、円に両替する時点
外国人バイヤーが日本に商談にきて、見送りの空港ロビーで有償サンプルを対面販売したとします。売主は円で価格提示しましたが、買主は円貨の持ち合わせ少なく、手元の米ドルでの支払いを要求、仕方なくロビーの銀行掲示レート(Cash Buying)でドル価に換算し、ドル紙幣とサンプルを交換、売主はそのまま同銀行で両替して、当初提示の円貨を入手します。
この場合、上記(1)(2)(3)は同日内で完結し、想定レートと入金両替レートは同じなので
外貨建決済であっても売主の為替リスクはありません。このように外貨建価格提示から回収両替までの「時間の長さ(不確実性)」が為替変動リスクと解釈できます。
代金の早期回収は重要ですが、いつもできるとは限りません。為替変動リスクをヘッジする代表的な方法に「外国為替の先物予約」があります。「外貨金額と両替時期」を決めた上で、将来の両替レートを固定する仕組みであり、上記(2)の時点で銀行等に為替先物予約を行い、(3)時点で実勢レートに関係なく、予約レートで円貨に両替できるというものです。先物予約レートは入金両替時期が先になるほど円高(手取円貨減少)方向となります。ただし、予約時点の実勢/先物レートの差は比較的小さく、これに対し、将来の為替レートそのものの変動リスクは、より大きなものと考えられます。
レート変動は誰も正確に予測できません。何もせずに為替差益/差損を生じさせる、為替変動にあわせ外貨単価の調整特約を買主と結ぶ、為替先物予約で将来の手取円貨を確定させる等、取引規模や回収期間、自社採算など、対応は売主の事業判断によります。尚、日本からの輸出における決済通貨は米ドル、円、ユーロ、中国元、他の順となっており、米ドル建は51.0%、円建は34.8%となっています(2024年1-6月計/財務省7/30発表)。