今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
当社では1級建築士の有資格者に月30時間の固定残業代を支給しています。1級建築士の業務は、専門業務型裁量労働制が使えると聞きました。実際に働いた時間に関係なく、毎月固定の月給(基本給+固定残業代)を支払えばいいですか?
裁量労働制の要件を満たさない場合は、実際に働いた時間の賃金を追加支給します。
1.専門業務型裁量労働制の要件を満たしているか否か?
①裁量労働制の対象業務に就いていること
「専門業務型裁量労働制」の対象業務とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた下記URLの19業務のことです。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/
建築士(1級建築士、2級建築士及び木造建築士)の業務は15号に定められていますが、一級建築士の有資格者であるだけでは足りず、実際に専門業務型裁量労働制の対象業務に就いている場合に、専門業務型裁量労働制が使えることになります。
②裁量労働制の制度を導入していること
上記①の対象業務に就いているだけでは、専門業務型裁量労働制は使えません。法令に基づき制度を導入する必要があります。
就業規則に専門業務型裁量労働制の定めを設け、さらに専門業務型裁量労働制に関する労使協定の締結、及び所轄労働基準監督署への届出が必要です。
今回の事例では、月30時間(例:1.5時間/日×1ヶ月平均所定労働日数20日)の固定残業代をみなし残業時間とします。また、専門業務型裁量労働制の適用を受ける労働者との雇用契約書にも、当該制度の適用を受けることを定め、かつ、制度の適用にあたって労働者本人の同意を得る必要があります。
2.裁量労働時間制と固定残業制度の違い
上記1の裁量労働制の要件を満たした場合には、月30時間のみなし残業時間以上に残業しても、原則として追加の時間外労働(1日8時間、週40時間を超える労働)の割増賃金を支給する必要はありません。
ただし、裁量労働制の要件を満たさない場合は、実際の残業時間に相当する賃金額の方が固定残業代よりも高額になれば、差額を追加して支払わなければなりません。
なお、裁量労働制の適用を受けていても、法定休日(週1日の休日)、深夜時間帯(22〜翌5時)の労働は、裁量労働に含まれませんので、別途割増賃金を支払う必要があります。
(回答日:2024年10月4日)