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海外客先に価格提示をする際、重要な「インコタームズ」というルールがあり、
2020年から最新版が発効したと聞きました。その概要を教えてください。
貿易当事者間の「義務、危険、費用」を規定した定型的な取引条件です
貿易取引において価格交渉は最も重要な項目ですが、売主、買主間で3つの重要項目に留意、合意する必要があります。
1. 当事者の「義務」
国境を挟んで貨物が長距離輸送される為、様々な手続きが必要となります。輸出/輸入の
通関申告や許可取得、国際運送の手配、貨物に対する海上保険の付保等を売主、買主の
いずれが行うのか、事前に決めておくことが必要です。
2. 商品の引渡し場所
輸送中の貨物に万一、価値の損失や滅失が発生した場合、売主、買主のいずれの責任
範囲になるのかが問題となります。この危険リスクを売主から買主に移転する引渡し場所を決める必要があります。
3. 費用負担区分
売主、買主間で合意する貿易価格にどのような費用が含まれているのか明確にしないと
トラブルの元となります。国内運送費、通関料、海上運賃、保険料、関税等が対象です。
これら3つの重要項目を、売主と買主間で商談の都度、詳細に協議、取り決めることは
煩雑なため、パリに本部がある国際商業会議所(ICC)が1936年に作成した「貿易取引条件の解釈のための規則」がインコタームズと呼ばれる国際ルールです。インコタームズは取引環境の変化にあわせ定期的に改訂されており、最新版が2020年1月に発効した「インコタームズ@2020」であり、定型的な貿易取引条件が11種類決まっています。
FOB Osaka Port Incoterms@2020 Yen10,000.-
CIP Hamburg Incoterms@2020 Euro200.-
価格交渉や契約書上でこのような標記をすることで、売主、買主間の「義務」「危険」「費用」に関する責任範囲が明確になるというもので、トラブルを避けることができます。
尚、インコタームズは法的な強制力を持つものではないので、関係当事者がこれを採用する合意が必要、又上記3項目以外の項目(支払い条件や所有権移転等)については規定しておらず個別合意が必要です。
11種類のどのインコタームズを採用するかは当事者間の協議により決定します。海外客先向の価格提示には貿易関連経費に関する理解が不可欠であり、これを元にした個別採算をインコタームズに反映させ、価格交渉を行って下さい。