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特許と同じように、製品に関わる知的財産を保護する制度として「実用新案」という言葉をたまに聞きます。身近に実用新案権を取得した企業もあるようなのですが、実用新案登録は特許と何が違うのですか?
権利行使に必要な、審査官による審査のタイミングが異なります。
両制度は、技術的思想の創作を保護する点において共通します。また、何れも特許庁長官に出願することにより設定登録を受け、かつ、新規性や進歩性などの登録要件が課される点においても共通します。
一方で実用新案制度は、特許制度よりも水準の低い創作を保護するための簡便な制度と位置付けられています。そのため、以下の点で大きく異なります。
1.早期保護
特許権を取得するには、特許庁の審査官による審査を受けます。その結果、特許査定をもらうことによって特許を受けることができます。
その一方で、実用新案権を取得するために実用新案登録出願を行いさえすれば、その出願の基礎的要件を満たす以上は、全ての出願について登録を受けることができます。すなわち、登録を受けるまでの間に、新規性や進歩性などの登録要件(実体的要件)の審査を受けることはありません。
平成5年の法改正までは、実用新案登録出願についても出願段階で実体的要件が審査されていましたが、早期に実施する技術やライフサイクルの短い技術の早期保護のため現行の制度に変更されました。
2.保護対象
実用新案制度による保護対象は、物品の形状、構造又は組合せに限定されます。そのため、特許制度下の保護対象であるプログラム、化合物、方法の発明などは対象となりません。
3.実用新案技術評価
上で述べたように実体的要件の審査を受けずに実用新案登録を受けられる一方で、登録の前後にかかわらず、特許庁長官に技術評価の請求を行うことができます。
そして、実体的要件を満たす旨の技術評価書を提示しなければ、実用新案権者であっても、自らの実用新案権の行使をすることができません。すなわち、特許制度においては登録のために審査を受けますが、実用新案制度においては権利行使のために審査を受けます。
なお、実用新案制度における進歩性要件の方が特許制度よりも緩いものであることが規定されています。
4.存続期間
特許権の存続期間が出願日から20年、実用新案権が10年です。