今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
当社のスタッフが退職することとなりました。就業規則には、在職中の競業避止義務、秘密保持義務の規定はあるのですが、退職後の規定はありません。退職後に担当顧客を引き抜かれないようにする方法はないでしょうか。
競業避止、守秘義務等の誓約書と顧客情報のデータ管理の徹底がポイントです。
就業規則等で定められた競業避止義務・秘密保持義務の規定は、退職後は労働契約の終了とともに義務も終了してしまいます。そのため、就業規則等で退職後の定めがなければ、退職後の競業避止義務の特約や退職後の秘密保持義務の特約を記載した誓約書を署名・押印の上、提出してもらうことが必要となります。
特に、競業避止義務については、退職後の労働者の職業選択の自由を制限することになりますので、誓約書をとっていた場合であっても、裁判例では、守られる企業の利益、労働者の不利益の内容・程度、代償措置の有無・内容等を総合考慮して合理性が認められる場合でなければ、損害賠償や差止め請求を認めない傾向にあることに注意が必要です。
企業独自の営業秘密やノウハウの部分を守るという正当な目的があり、かつ規制が、その目的のために必要な範囲内(地域、期間、職種の限定)であり、退職金の上積み等の代替措置をとっている等の事情を付加して合理的な制限であるかどうか判断される傾向にあります。
誓約書の効力を主張するためには、できるだけ競業となるべき範囲を限定した退職後の競業避止義務を定めたものを用意するとともに、顧客情報を利用しないという退職後の秘密保持義務を定めた誓約書という2種類の義務を定めておくことが重要です。
秘密保持に関する誓約書では、(1)技術上の情報(2)営業上の情報、(3)秘密と指定した情報等とともに「顧客、元顧客に関する情報」の項目を入れた誓約書を提出してもらうとともに、顧客情報の持ち出し等をできないように厳密にデータ等を管理されるべきでしょう。
ここでは、利用できない秘密情報の特定が重要となりますので、貴社独自のノウハウがある場合には、具体的な定めで秘密情報として指定され、列挙しておかれるとよいでしょう。