今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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弊社はB社に自社製品を販売するため、A社から部品を買う契約をしましたが、納期通りに納品されなかった結果、B社への納品が遅れてしまいました。これにより弊社には様々な損害が生じたのですが、A社にどこまで請求できるのでしょうか。
通常損害と特別損害が対象ですが、契約書に別の記載がある時はそのルールに従います。
1 通常損害と特別損害
(1) 損害の種類
取引先が契約に違反した結果自社に損害が生じた場合、取引先に対して法律上賠償の請求をできるのは、「通常損害」と「特別損害」です。
(2) 通常損害とは
通常損害とは、契約違反があった場合、通常発生すると考えられる損害を指します。例えば、質問の例では、第三者であるC社から代替品を急遽入荷するのにかかった費用などがあり得ます。
(3) 特別損害とは
特別損害とは、通常は発生しないが、特別の事情によって生じたもので、当事者が予見すべきだったものを指します。例えば、「B社との間で数千万円分の売買契約が成立済みであること」などの事情をA社が知りつつも納品が遅れてしまった場合には、その数千万円分の売上相当額が特別損害にあたる可能性があります。
2 契約書の記載
ただし、契約書にこれと異なる記載がされている場合には、契約書の記載が優先されます。
(例1)「通常生ずべき損害のみの賠償を請求できる」などと規定されている場合には、特別損害については原則として請求できません。
(例2)「既に支払われた金額の合計を上限として損害の賠償を請求できる」などと規定されている場合には、通常損害と特別損害の双方を請求できますが、実際の損害額にかかわらず、原則として請求できる上限額が決まっていることになります。
(例3)「契約に違反した場合、違約金として金100万円を支払う」などと規定されている場合には、実際の損害が100万円より多くても少なくても、原則として100万円を支払うことになります。
3 さいごに
上記は一般的なご説明にすぎず、実際の損害賠償の場面では、より多くの事情を複雑に考慮する必要があります。このようなトラブルを防ぐにも、契約を締結する時点で適切に記載しておくことを推奨します。
契約書の内容に悩まれたら、お気軽にご相談ください。
(回答日:2024年8月30日)