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弊社は上場をめざして創業したスタートアップです。今般エンジェル投資家の方から資金調達を行いたいと考えています。「みなし優先株式」という方法があると聞いたのですが、どのような資金調達方法なのでしょうか。
将来の資金調達時に優先株式に転換する合意付きの普通株式です。
エンジェル投資家とは、スタートアップ企業の創業時の投資を中心に様々な支援を行う投資家をいい、起業経験や会社経営経験のある方が多いです。
エンジェル投資の方法としては、株式や新株予約権を用いたものが多く、近時では、普通株式、J-KISSという新株予約権、みなし優先株式による方法が主流になっています。
このうち、みなし優先株式とは、将来、優先株式に転換する合意がなされている普通株式をいいます。資金調達時には普通株式を発行する手続とともに、将来の一定の資金調達の際に普通株式を優先株式に転換するという内容の株主間合意書を締結します。みなし優先株式のための雛形も公開されていますのでご利用ください。
(https://bambooincubator.jp/template/angels)
その後、例えば将来的にVCなどから一定の要件を満たす優先株式による資金調達が行われた場合に、上記の合意に従って、普通株式が優先株式に転換されることになります。この転換の手続は、貴社と株主が協力して行わなければなりません。
J-KISSと比較した場合のみなし優先株式の主なメリットは、エンジェル税制の適用タイミングが「払込時点」であることです。令和6年度税制改正により、J-KISSなどの有償新株予約権も、一定の要件を満たせばエンジェル税制の適用対象になることになりましたが、実際にエンジェル税制が適用されるのは、新株予約権を行使して株式に転換した年度となり、投資資金を払い込んだ年度ではありません。そのため、投資資金を払い込んだ年度でエンジェル税制の適用を受けたい投資家にとっては普通株式かみなし優先株式が有力な候補となります。
他方、普通株式と比較した場合のみなし優先株式の主なメリットは、M&Aなどのエグジットとなった場合に、経営株主に優先して自らが投資時に払い込んだ金額につき優先分配を受けることができることです。
これに対し、みなし優先株式の発行には、上記の転換に関する合意書の締結など普通株式と比べてやや複雑な手続が必要であることや、J-KISSと違って投資家に議決権を認めることになることなどの特徴があるため、専門家の助言なども踏まえて事案毎に最適な方法をご検討ください。
(回答日:2024年8月23日)