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弊社は上場をめざしているスタートアップです。今般事業拡大のために資金調達を行いたいと考えています。ベンチャーキャピタルの方から優先株式について説明されたのですが、どのような資金調達方法なのでしょうか。
残余財産の優先的な分配など一定の優先権が認められた株式です。
優先株式は、種類株式の一種であり、剰余金の配当や会社清算時の残余財産の分配について普通株主よりも優先して受け取ることができる権利が認められた株式をいいます。
ベンチャー投資においてよく使われる優先株式は、残余財産の分配についてベンチャーキャピタル(VC)に優先権を認めるものです。ここでは会社清算時に限られず、例えば、スタートアップがM&Aによるエグジットを行う場合にも「みなし清算」条項を定款や株主間契約に置いて、事業の売却代金からVCが優先的に分配を受けることができる旨を定めていることが多いです。このように、IPOに至らなかった場合のVCのリスクをヘッジすることで、VCが資金を出しやすくしています。優先株式には「参加型」と「非参加型」があり、「参加型」の優先株式の場合には、M&Aによる事業売却代金からVCの出資額を優先的に回収し、その後の残額の分配にも出資額割合に応じて「参加」できるため、VCは一定のリターンを得ることができます。
優先権以外にもいくつか特別な条件が設定されることが多いです。例えば、VCが取得した優先株式をいつでも普通株式へ転換することができる「取得請求権」や、貴社がIPOの決定を行った際にVCの優先株式を普通株式に強制的に転換することができる「取得条項」を付することも多いです。
また、VCから取締役を派遣するために役員選解任権付種類株式とすることもできますが、種類株主総会の手間を減らすために株主間契約で定める例が多いです。
このように優先株式を用いることでオーダーメイドの資金調達を行うことができますが、実務上、優先株式の発行に至るまでには、弁護士、会計士、税理士などの専門家のフィーがかかったり、発行後も種類株主総会の開催の手間がかかったり、他に株主間契約を締結する必要があったりしますので、優先株式が使われるのは、1億円以上の比較的額の大きい調達のケースが多いです。