今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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取引先から、当社の製品の発注を考えているとの話がありました。正式な発注は納品の1週間前にすると言っていたのですが、それでは製造が間に合いません。そこで発注に先立ち製造を始めたものの、結局、交渉が打ち切られて発注がありませんでした。もう諦めるしかないのでしょうか?
場合によっては、契約締結上の過失責任を主張して、一定の損害賠償が請求できるかもしれません。
契約交渉がまとまらず破棄されたとしても、交渉相手に対しては、法的責任を追及することはできないのが原則です。しかし、例外的に、契約交渉を不当に破棄したことをもって、相手方に損害賠償を請求できる場合があります。
具体的な契約交渉が開始され、主な事項が決まっていくなど交渉がある程度進展していった段階においては、交渉当事者の一方が、相手方に対して、契約が成立することが確実であろうという信頼を与えた場合、その信頼を裏切る行動をしてはならないという義務を負います。この義務は信義則に根拠を有するものであるため、この義務に違反した交渉当事者は、不法行為に基づく損害賠償請求責任を負う場合があります。
では、どのような状況であれば契約が成立することが確実であろうという信頼を与えたことになるのでしょうか。これについては、ケースバイケースの判断となります。
今回のケースでは、相談者は、製造に相当期間を要する装置を製造・販売しているようです。交渉相手は従来からの取引先ですから、相談者の製品が製造に時間を要することは分かっていたものと思われます。こうした事情に加えて、例えば、交渉相手が「納期はこの日だから間に合わせるように」などと指示したり、「発注書を切れるのが先になるだけで注文はするから」などと発注を確約したような事情があれば、契約成立が確実だという信頼を与えたといえる可能性が高まります。
その際、当事者間にどういったやりとりがあったのか、どういった前提が共有されていたのかが重要になりますので、これらを示す証拠を揃えることが重要です。