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廃業時の手続きとして、通常清算、特別清算、破産等の概要や手続の流れについて

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  • 廃業時の手続きとして、通常清算、特別清算、破産等の概要や手続の流れについて

    会社を経営しておりましたが、廃業を決意し、会社をきれいに終わらせたいと考えていますが、会社の財務状況に応じて、どのような手続きを選択したらよいのでしょうか。

    基本的に、資産超過であれば通常清算、債務超過であれば特別清算や破産を選択することになります。



     経営者の高齢化に伴い、廃業を選択する中小企業が増加傾向にあります。廃業に際し、企業の資産・負債の状況を踏まえ、資産超過であれば通常清算、債務超過であれば特別清算や破産による処理が選択されます。
     ここでは、通常清算、特別清算、破産等の諸手続について、その概要を説明します。
    (1)通常清算
     資産超過の場合であれば、すべての債権者に対し弁済を行っても残存資産が生じることになります。営業を停止し、会社解散後、清算人(通常、従前の代表者が就任します。)が会社資産を換価したうえで、債権者へ弁済を行い、残存資産がある場合には、株主に配当を行い、清算手続を終了させます。
     通常清算では、裁判所が関与せず、すべて企業側で手続が完結します。具体的な流れとしては、①解散・清算人の選任(株主総会決議等)、②解散登記、③債権届出(官報公告)、④解散時の財産目録等の作成・承認(株主総会)、⑤資産換価、⑥債権者へ弁済、⑦残存財産がある場合株主へ配当、⑧最終的な決算報告の承認(株主総会)、⑨解散結了の登記、⑩会社登記閉鎖、で会社が消滅します。
    (2)特別清算
     「清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること」又は「債務超過の疑いがあること」に該当する株式会社の場合は、特別清算を選択することになります。なお、特別清算の場合、基本的には債権者との間で、事前に特別清算による債権放棄を行うことについて同意を得るか、同意が得られる可能性が高いことを前提に選択することが多い手続です。なお、公租公課や労働債権等、優先的な債権については弁済しうるだけの残存資産が必要となります。
     特別清算では、和解型と協定型とがあり、前者は各債権者との間で個別に和解契約(弁済及び債権放棄の合意)を締結し、裁判所の許可を経て、効力を生じさせるものです。後者は、債権者集会を開催し、協定案について決議を経る必要があり、協定案は、決議参加債権者の過半数、かつ、総議決権額の3分の2以上の賛成があれば可決します。
     具体的な流れとしては、①解散・清算人の選任(株主総会決議等)、②解散登記、③債権届出(官報公告)、④解散時の財産目録等の作成・承認(株主総会)、⑤資産換価、⑥特別清算の申立、⑦和解案又は協定案の提示、⑧和解許可又は債権者集会における協定案可決、⑨和解又は協定に基づく弁済及び債権放棄、⑩終結決定・登記嘱託、⑪会社登記閉鎖、で会社が消滅します。
    (3)破産手続
     支払不能や債務超過となっており、債権者の協力も得ることが難しいような場合や公租公課等の優先的な債権を弁済するに足りる資産がないような場合、破産申立を選択することになると思われます。破産手続開始決定後、裁判所より選任された破産管財人が破産財団(破産者の資産の総称)を管理し、資産の換価や配当を実施します。管財人は、過去の破産者の行為についても調査し、破産申立前に、一部の債権者のみに弁済している場合(偏頗弁済)や相当低い価格で資産処分している場合(廉価処分)等、の事情が存在する場合には、その行為を否認して、逸出した財産を回復する手続を行います。
     一般債権者に対し、配当がなされるほどの財団が形成できない場合には、異時廃止として破産手続が終了しますが、配当可能な財団が形成できた場合には、配当がなされます。
     具体的な流れとして、①破産申立、②破産手続開始決定、③管財人選任、④調査・財団の保全・換価業務、⑤債権者集会(通常、複数回定期的に実施され換価状況の報告等がなされます。)、⑥配当可能な財団形成があれば債権届出、なければ異時廃止で手続終了、⑦債権届出の認否、⑧配当表作成・配当実施、⑨終結・廃止決定、⑩終結の登記嘱託、⑪会社登記閉鎖、で会社が消滅します。
    (4)放置された会社の取り扱い
     最後の登記から12年経過した株式会社は、登記官の職権によるみなし解散が行われます。また、解散登記から10年経過すると、登記官は職権により登記を閉鎖することができます。しかし、いずれも会社が消滅するわけではなく、結局、会社を消滅させるには、清算手続を最後まで終了させて、結了登記をしなければなりませんのでご注意ください。

回答した専門家
法律(弁護士)

岸野 正

専門的な知見を分かりやすく説明し、親しみやすい運営を心掛けておりますので、ご...

技術系の素養に加え、弁護士として10年以上の経験があり、主に中小企業向けの企業法務の相談を行っております。また、中小企業支援や地域経済活性化を目的として設立された株式会社地域経済活性化支援機構へ出向し、シニアマネージャーとして中小企業支援業務に従事しておりました。これまでの知見を活かし、中小企業の悩みやトラブルについて最善の解決を目指して相談者の皆さまと一緒に考えたいと思います。

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弁護士
中小企業診断士

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中小企業に対する企業法務(株主総会指導、法律相談、契約書...

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