今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
最近,コンプライアンスを重視して経営するということを良く聞きます。企業コンプライアンスについて具体的に教えてください。
経営の適正化のため,法令やガイドラインや社内ルールを遵守することです。
コンプライアンス(compliance)は一般的に「法令遵守」と訳されています。企業活動で遵守が求められるのは、単に制定されている法律だけではありません。企業活動の場面で言われている「コンプライアンス」には、制定されている法律のみならず、ガイドラインや社内ルールを遵守することも含むと考えられています。
コンプライアンスを確保するために会社法は、会社において、内部統制システムを取締役会(取締役会設置会社の場合)または取締役(取締役会非設置会社の場合)の決議事項として定めています(会社法362条4項6号、同法348条3項4号)。内部統制システムとは、業務の適正を確保するための必要な体制のことです。具体的には、
①取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理の体制
②損失の危険の管理に関する規定その他の体制
③取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
④使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
⑤当該株式会社並びにその親会社及び子会社からなる企業集団における業務の適正を確保するための体制
と会社法施行規則100条1項、同98条1項で定められています。かかる内部統制システムを構築することが、コンプライアンスの確保に繋がるわけです。
会社法上、コンプライアンス構築義務違反に罰則は定められていませんが、会社法上の大会社(資本金が5億円以上又は負債総額が200億円以上)の取締役がかかる内部統制構築義務を怠った場合は、会社に対して会社法423条に基づく任務懈怠責任が生じ得るほか、会社法429条1項に基づき第三者に対しても責任が発生する場合があります。
もっとも、取締役の責任問題にとどまらず、過去には食品産地偽装等の不正行為によって会社自体が消滅してしまった例もあります。コンプライアンス違反の企業不祥事によるリスクは企業の存続問題にも及ぶのです。こうした理由から、近年、コンプライアンス経営の必要性は高まるばかりです。