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私は事業を営んでおり,銀行を含む計10社から約4000万円の借入金債務や買掛金債務があります。昨今の不況で売上げが下がり,返済が滞っていることから,最悪の場合,自己破産も考えています。このような場合に債務を処理する方法はあるのでしょうか?
いくつかの方法がありますので,事業の実情に応じて適切に選択して下さい。
1.一般に,返済不能な債務を処理する方法としては,「私的整理」と「法的整理」の2つがあると言われます。
2.「私的整理」は,任意整理とも呼ばれ,裁判所を介さずに銀行や取引先などの債権者と交渉することで支払条件の変更(リスケジュールや分割払いの合意)や債務の減額を受けるというものです。特に,取引先に対する買掛金債務については約定通りに支払いつつ,金融機関の債務について支払いを延ばすといったような別異の対応が必要なケースでは重要性を持つ手続です。なお,長期間にわたり高金利(利息制限法違反のグレーゾーン金利)の貸金業者から借入を継続していたような場合は,法人・個人に関わりなく引き直し計算により大幅に債務が減額されたり,過払金の返還請求ができることもあります。
3.「法的整理」は,私的整理では債務が処理し切れない場合に裁判所の手続を利用するもので,自己破産や民事再生の手続がこれに含まれます(他に「会社更生」や「特定調停」といった手続もありますが,ここでは言及しません)。ざっくり言えば,①自己破産は事業を廃止・清算して,今ある財産を管財人(裁判所から選任される公平・中立な立場の弁護士)が全てお金に換えて債権者に配当するという手続,②民事再生は事業の継続を前提に,全ての債権をごっそりと減額してもらい,裁判所から認可を受けた再生計画に基づき,減額した債務の弁済を行うという手続です。なお,これらの手続は法人と個人でかなり性質が異なりますので,注意が必要です。
①の自己破産を会社(法人)が行う場合,連帯保証人である代表取締役(個人)も同時に自己破産することが通常です。全従業員を解雇し,事務所を明け渡し,取引先へ一斉に通知を発送するなど,必要なプロセスがありますので,あまりぎりぎりではなく,なるべく早めに弁護士にご相談ください。なお,自己破産の手続をとるとしても,例えば,従業員が設立する別会社に事業譲渡を行うなど,形を変えて事業を継続する余地はあります(いわゆる第二会社方式)。また,自己破産の手続で債務を処理した後は,新たに看板を掲げて,事業を行うことは自由ですので,それらについても弁護士にご相談下さい。
②の民事再生を会社(法人)が行う場合は,実務上,少なくとも数百万円の費用が必要ですので,小規模な会社についてはあまり現実的でないかもしれません。むしろ,個人事業主で債務総額が5000万円までの場合において,簡易な特別の手続(小規模個人再生)を利用するということが多いでしょう。個人事業者がこの手続を利用した場合,ケースによって上下はありますが,概ね5分の1まで債務を圧縮した上で,これを3年〜5年で分割払いするという弁済計画を裁判所に認可してもらいます。この手続については住宅ローンについては約定通り支払うことで自宅を守ることができる(いわゆる住特条項)というオプションもありますので,詳しいことは弁護士にお尋ねください。
「なお、近時は『経営者保証ガイドライン』を利用して、会社は自己破産しても、連帯保証人である経営者個人は私的整理を行って自己破産を回避するという方法もあります。どのような手続が最善なのかは弁護士ともよくご相談ください。」
(回答日:2024年10月31日)