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相続人が複数いるときに、会社や事業をスムーズに引き継ぐにはどうすればよいでしょうか。トラブルを避けるための方法を教えてください。
遺言や家族信託を活用し、承継先を明確にしましょう。
会社の株式や事業用資産が相続で分散してしまうと、経営の意思決定がスムーズにできず、最悪の場合は事業の継続が難しくなります。従業員や取引先に迷惑をかけてしまう可能性もあり、早めの対策が不可欠です。
◆防止策① 遺言書
遺言書で「株式や事業資産はこの子どもに承継させる」と指定しておけば、希望どおりの承継が可能になります。ただし注意すべきは「遺留分(いりゅうぶん)」です。これは配偶者や子ども等の相続人が最低限もらえる取り分で、侵害すると請求される可能性があります。
そのため、生命保険や現金を準備し、他の相続人への遺留分に充てるなどの工夫が有効です。
◆防止策② 家族信託
家族信託を使えば、生前から特定の子どもに株式や事業資産を託し、経営を任せることができます。遺言よりも早い段階で承継の形を整えられる点がメリットです。ただしこちらも遺留分の問題は残るため、不動産や金銭などを代わりに割り当てるなど配慮が必要です。
◆何もしないリスク
対策をしないまま相続が発生すると、株式や財産の分け方は相続人の話し合いに委ねられます。意見がまとまらなければ経営権が宙に浮き、事業に大きな支障が出かねません。
◆まとめ
・株式や事業資産の承継先を事前に決めることが不可欠
・遺言書や家族信託を活用し、遺留分対策もあわせて検討
・生前に経営者自身が「誰に継がせたいか」を明確に伝えることが最大のトラブル防止策
事業承継は、残された家族のためだけでなく、従業員や取引先を守るための準備でもあります。経営者が元気なうちに意思を示し、相続人にしっかり伝えることこそが、安心して会社の未来をつなぐ一番の方法です。
事業承継の悩みでお困りの場合には、経営相談室にご相談ください。
(回答日:2025年10月6日)