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M&A型の事業承継が増えてきましたが、最近、「悪質業者に騙されるな」という声もちらほらと聞こえるようになりました。M&Aを勧めるにあたってどのような点に注意すればよいのでしょうか。
承継先のオーナーが本当に信頼できる人か慎重に判断してください
近年、M&A型事業承継の名のもとに、承継会社の流動資産やノウハウだけを親会社へ吸い上げ、承継会社を短期間で疲弊・倒産させる事例が社会問題化しています。問題を起こしているのは承継先企業ですが、M&A成立の報酬目当てでこうした不適切なマッチングを加速させている仲介業者も悪質だと指摘されています。
承継会社のオーナーの本意は、事業活動と雇用を守り、長く地元に根差して続けることであるはずなのに、逆にこれらを踏みにじられてしまうのでは全く本末転倒です。それゆえ、相手選びと契約作法を間違えないことが最大の防御になります。
対策として、まず「誰に託すか」を徹底的に見極めることが大事です。トップ面談だけでなく、現場責任者や人事・経理担当らとも複数回対話し、過去の承継実績、離職率、労務トラブル、粉飾・訴訟履歴、関連当事者取引の有無を検証します。金融機関・主要取引先・OBへのリファレンスチェックも有効です。数字の説明が曖昧であったり、開示を渋る、短期の利益のみを強調する相手は要注意です。
次に、契約で「抜かれない仕組み」を織り込みます。①資金の社外流出を制限する配当・貸付・関連当事者取引の禁止条項、②ノウハウ・顧客情報・商標・特許・著作物の帰属・利用範囲を明確化し、無償移転を封じる知財条項の設定などが要点です。
拠点統廃合・仕入先切替・内部貸付など、価値の移し替えにつながる施策は事前同意制にしておき、万一の背信行為に備え、買戻し権・解除権・違約金の発動条件を明文化しておくことも効果的です。
承継会社のオーナーの目的は「事業と人を未来につなぐこと」です。本意に反した結果を避けるためには、相手の人格と実績を時間をかけて見極め、契約で資産・ノウハウ・雇用を守る二重の安全装置を設けることが肝要です。甘い期待ではなく、検証と仕組みで守り切る。これがM&A型事業承継で騙されないための最低限の心得だといえます。
(回答日:2025年10月2日)