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海外取引において現地のパートナーと合弁契約を締結し、合弁会社を運営する際の留意点について教えてください。
合弁契約を成功に導くためには信頼できるパートナーを選ぶことと当事者間のビジネスプランを最初に明確にしておくことです。
合弁契約では本格交渉に入る前に基本的な条項についての自社のスタンスを固めておく必要があります。相手は何を期待しているのか、よく考えておくことが必要です。配当を得たいのであればシンプルですが、配当の考え方が違うことも多く、日本側が比較的長期的なスタンスなのに対して、資金の短期回収を優先しているケースも多く見られます。合弁契約書には出来る限り詳細な項目まで規定しておくことが望ましいです。
1.新株引受・既存株主からの株式譲渡を通じて、既存会社を合弁会社とする方法と合弁会社を新規に設立する方法があり、既存会社に対しては、デューディリジェンス(実態調査)を実施し、結果を合弁契約に反映させる必要があります。
2.合弁会社への投資は配当により回収するのが普通ですが、実際にはむしろ、株主・合弁会社間のプラント・機械、原材料、部品、製品などの各種販売・供給契約や技術援助契約によるロイヤリティ収入により利益を得る場合が多く、合弁契約に付随契約として添付されます。
3.出資比率
対等出資か、マジョリティ・マイノリティかは重要な点であり、マイノリティの場合でも、特別決議を要する重要事項に対する拒否権を持たせ、定款にも記載しておく必要があります。
4.株式の譲渡制限
パートナーと共同で事業を遂行することを本旨としており、当事者による株式の譲渡を禁止するのが通例です。
5.株主の競合禁止義務
一定のテリトリーでの合弁会社との競合禁止をできる限り具体的に規定しておくことが必要です。
6.追加出資ないし保証義務
追加の投資が必要になることが多く、将来の投資リスクを限定するために資金調達方法を優先順位を含めて規定しておくことが必要です。銀行借入(株主の保証を必要とする)、株主借入、新株発行などで株主の出資比率に応じた責任分担を明記しておく必要があります。
7.許認可
当局から環境規制などの許認可を受けるには、日本側だけでは難しいケースがあるため、パートナーによる許認可取得のための協力義務を規定しておく必要があります。
8.デッドロック条項
合弁当事者の意思が一致しないため、会社の意思決定ができない膠着状態をデッドロックといい、対等の出資比率や、少数株主が拒否権を持っている場合に主に発生します。合弁会社を解散・清算するか、あるいは一方当事者へ譲渡するかなどを規定しておきます。
9.合弁解消方法
将来、合弁を解消する可能性も考慮し、解消事由(3期連続の赤字計上などの経済的事由など)と解消方法(相手方への株式譲渡など)について明記しておきます。