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辞めさせたい社員がいるのですが、解雇するのはハードルが高いとよく耳にします。
社員に自発的に退職してもらうべく退職勧奨をしたいのですが、退職勧奨は自由に行えるのでしょうか?また、退職勧奨はどのような場合に違法となるのでしょうか?
退職勧奨は自由に行えますが、執拗で不当な強要にわたる場合は違法になります。
1 退職勧奨の概要及び違法となる場合
退職勧奨は、会社が社員に対して合意退職ないし辞職(自主退職)を促す(勧奨する)行為をいいます。
退職勧奨には解雇権濫用法理のような法規制はありませんので、自由に行うことができます。
もっとも、退職勧奨は、あくまでも社員の任意ないし自発的な意思を尊重する態様で行うことが必要です。
そのため、「退職勧奨の態様が、退職に関する労働者の自由な意思形成を促す行為として許容される限度を逸脱し、労働者の退職についての自由な意思決定を困難にするものであったと認められるような場合」には、退職勧奨は「労働者の退職に関する自己決定権を侵害するものとして違法性を有し」不法行為に該当します(日本アイ・ビー・エム事件・東京高判平成24年10月31日)。
具体的には、不当な心理的圧迫を加えたり、社員の名誉感情を不当に害する言動を用いたりする退職勧奨は不法行為に該当します。
ですので、しつこく退職を強制する、無理やり退職合意書にサインさせる、といった方法はしないようにしましょう。
退職勧奨をするときには、社員に上記の退職勧奨の意味・内容を十分に理解してもらい、解雇と誤解されないように説明、対応することが肝要です。
2 退職勧奨を行う際のポイント
退職勧奨を行う場合には、事前に必ず弁護士等の専門家と相談のうえ、退職勧奨のシナリオを作成し、そのシナリオに沿って退職勧奨を進めましょう。
退職勧奨を進める際のポイントは以下のとおりです。
① 導入段階で「言い合いをする場ではないこと」「会社の言い分を伝える場であること」を社
員に理解してもらうこと
② 退職勧奨をする理由を説明すること
③ 退職勧奨をしていることを述べ、退職勧奨の意味を丁寧に説明すること
④ 「解雇」「クビ」というフレーズは絶対に使わないこと
⑤ (合意)退職条件を示すこと
(回答日:2024年8月29日)