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小規模M&A時、労務デューデリジェンスを行う場合の留意点を教えてください。

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  • 小規模M&A時、労務デューデリジェンスを行う場合の留意点を教えてください。

    今回、買収価格が数百万円前後の株式譲渡によるM&Aを検討しております。労務デューデリジェンスを行う場合、どういった点に留意すればよいでしょうか。

    簿外債務・偶発債務が存在しないか、調査事項の優先順位を決めましょう



     買収価格が数百万円程度の場合、デューデリジェンス(以下「DD」という)費用に数百万円単位をかけるのは予算的に難しいケースが多く、財務DDの中で、補足的にリスクの高い簿外債務・偶発債務になりえる部分のみ労務DDを行うケースもあります。事業譲渡の場合は、特定承継が可能なこともあり、労務DD自体を行わないで意思決定するケースも見受けられます。
     小規模M&Aと言っても、株式譲渡方式で譲渡会社を譲り受ける場合は、包括承継になるため、財務諸表などで把握できない「簿外債務」や「偶発債務」のリスクに十分注意を払う必要があります。見落としている債務がないか、典型的な債務例を考慮し、優先順位をつけ、DDを行うべきものと考えます。
    労務DDという観点で見た場合、認識できていない簿外債務・偶発債務が大きくなる可能性がないか、優先順位を決め、確認していくことが留意点になります。
    簿外債務:法定の割増率を下回った割増率で計算されているため生じる未払賃金、最低賃金を下回る場合の差額賃金等
    偶発債務:不当解雇によるバックペイの請求リスク、労働基準法上の労働時間計算の集計モレ、管理監督者の不該当等
     簿外債務で例示化した内容であれば、賃金台帳、出勤簿、労働条件通知書(雇用契約書)等を確認することで、数値化することが可能です。それに対して偶発債務で例示した内容は、ひとたび顕在化すると多額の損害賠償請求を受ける可能性がありますが、顕在化しない可能性もあり、数値化が難しいところがあります。そういった事情から労務DDの対象から除外するケースもあります。また運用面・事実経過の確認が必要なケースもあり、限られたDD期間内においてどのレベルのリスクを確認するためにDDを実施するか、事前にDD調査人と打ち合わせが必要になります。
     なおDDを行うことで問題となるべきことが明確になった場合、買収価格に反映させるか、表明保証のみで対応するか、事業譲渡方式に切り替えるか等、複数の選択肢がありますので、専門家等と慎重に対応方法を検討しましょう。

    (回答日:2024年8月28日)

回答した専門家
労務管理

河合 保則

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