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業績は順調で利益も出すことができていますが、納税額を見ると、資金を有効に使えていないと感じます。節税するには、どうすればいいですか?
会社のライフサイクルや今後のビジョンを元に判断しましょう。
節税には大きく分けて3種類の節税策があります。
(1) 税額控除など本質的な節税
キャッシュアウトを伴わず税金だけが減る。(賃上げ促進税制、先端設備等導入計画の固定資産税軽減など)
(2) 特別償却など利益を出す期をずらす節税
ある種の投資や、特別償却など。トータルの期間では税金は減らない。
(3) 支出を伴う節税
上記のうち、(1)は行うことに意味があります。
(2)は時期をずらすことで、何らかの節税策を講じる余地がありますので、行うことに一定の意味があるでしょう。
ただし、直近で利益を減らす事ができても、どこかのタイミングで利益が出る事になります。
支出が多い期で利益が出るようにできればよいですが、計画通りにならないことも多く、そうなると、利益が出るタイミングで、次の節税策が必要になることもあります。
また、節税策の内容にもよりますが、投資額分の資金の固定化を招く場合もあり、結果的に、事業環境変化への柔軟な対応がしにくくなることが懸念されます。これだけ事業環境変化の大きい状況において、先々の意思決定に制約が課せられることは大きなリスクではないでしょうか。
上記(3)は、納税額は減るものの、それ以上にキャッシュが減ることになります。(3)の節税策を行うべきかどうかについては、会社のライフサイクルや今後のビジョンを元に判断する必要があります。
すでに成熟した事業で、資金回収フェーズにあり、それ以上の成長を求めないような場合は、(3)の節税策にも一定の意味があるかもしれません。
逆に今後、さらなる成長を求める場合には、手元により多くのキャッシュを残し、投資を進める必要がありますので、(3)の節税策はお勧めできないと考えます。判断基準は経営ビジョンです。
「前は儲かっていたけど、気づいたら、お金がなくなっています」というご相談の中には、節税で資金を失っているケースをお見かけします。
節税→資金流出 →借入→返済負担→投資意欲減退…。負のスパイラルです。
事業環境の変化やビジネスモデルの陳腐化に備えるには、納税額単体にフォーカスするのではなく、キャッシュフロー全体を考えて、手元にキャッシュを残す必要があります。
また、節税に捉われていると、過少利益が当たり前になってしまうことがあります。そうすると、外部環境等の変化によって、売上が少し低下しただけで赤字になってしまいます。結果的に、自己資本比率が高まらず、金融機関からの評価も低いままで、資金調達で不利にもなります。また、大きな赤字を出したときに債務超過になる懸念もあります。
結論としては、納税額のみにフォーカスするのではなく、経営ビジョンを起点に必要なキャッシュフローの全体像を俯瞰し、必要なキャッシュを手元に残す節税策のみを行う事が望ましいと考えています。
例外は、含み損のある資産を売却して、特別損失を計上する方法です(売却損、在庫処分損など)。
売却することで、キャッシュが手元に入り、利益圧縮にもつながりますし、貸借対照表もスリム化できます。
利益が大きく出る場合には、含み損のある資産売却は一つの方策ではないでしょうか。
(逆に、赤字の年度に、含み益のある資産売却を行うことも、節税に似た効果が見込めます)