今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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当社に勤務して5年目となる従業員がいます。この従業員は基本的な業務においてもミスが多いうえ、同僚に対して攻撃的な言動をするなど態度もよくありません。ただちにこの従業員を解雇することはできるでしょうか。
いきなり解雇を検討するのではなく、まずは改善の機会を与えるべきです。
ミスが多く、同僚に対する言動など勤務態度も良好とはいえない従業員に対して解雇できないかという相談をしばしば受けます。しかし、法律上、解雇が有効とされるためのハードルは高いといえます。すなわち、安易な解雇は、「解雇権の濫用」であるとして訴訟で敗訴してしまうおそれがあるといわざるを得ないのです。
質問にあるような従業員の場合、まずは改善の機会を与え、それでもなお、改善が見られなかったということを立証できるようにする必要があります。例えば、口頭で指導するだけではなく、具体的な指導内容を記載した書面を従業員に交付し、当該指導を踏まえてどう改善していくのかを書面で報告させるとともに、その後の当該従業員の状況を書面に残すなどの措置を繰り返すことが必須となります。
そして、仮に当該従業員が指導に従わないようであれば、能力不足などを理由とするのではなく、業務上の命令に従わなかったことを理由に戒告や注意といった懲戒処分をすることを検討します。ただし、懲戒処分をする際は就業規則等に処分の根拠があることを確認する必要があります。
このほか、可能であれば、当該従業員を他の部署に異動させ、新たな職場での改善の機会を与えることも検討する必要があるでしょう。
このように、丁寧な改善の機会を与えたにもかかわらず、なお改善が見られない記録が積み重なっていけば、当該従業員に対する退職勧奨を行い、自主的な退職を促す際の説得の材料にもなりえます。また、どうしても当該従業員を解雇せざるを得ないような場合であっても、なぜ解雇をするのかを『具体的』に主張・立証できることから、訴訟での敗訴リスクを少なくすることができます。
いずれにしても、「この従業員は問題があるから直ちにやめてもらおう。」といったスタンスではなく、丁寧な対応をすることが適切な解決につながることとなるのです。