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試用期間中の従業員を解雇する場合の注意点を教えて下さい

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  • 試用期間中の従業員を解雇する場合の注意点を教えて下さい

    試用期間3ヵ月の中途採用者がいます。面接時にビジネス英語対応可能と聞いていましたが、実際は日常会話レベルであることが発覚しました。当社は貿易業で英語必須なので、カタコトでは仕事になりません。試用期間中なので、自由に解雇して問題ないでしょうか?

    試用期間中の解雇(解約)にも、法律上の制限があります。


    1.試用期間の解雇権(解約権)制限
    試用期間は「解約権保留付労働契約」であり、留保解約権行使(本採用拒否)が有効と認められるためには、判例上、概ね以下の要件が必要とされています。
    ① 採用決定後における調査の結果または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また、知ることが期待できない事実を知ったこと
    ② そのような事実に照らし、労働者の継続雇用を適当でないと判断することが、客観的に相当であると認められること
    なお、資質・能力・適性等について明確に不適格と判断できる場合、例外的に試用期間中に留保解約権を行使できますが、原則として必要性及び目的に応じて定められた試用期間満了時に判断する必要があります。裁判例でも、試用期間満了を待たない解雇は、試用期間満了時の解約権行使に比べ「より一層高度の合理性と相当性が求められる」とした事例があります(ニュース証券事件:東京高判平成21年9月15日)。

    2.今回のケースは?
    ①面接時に業務内容とビジネス英語が必須と伝えていたにも拘わらず、入社後に能力不足が判明したこと、②日常会話レベルでは全く仕事にならず、努力による早期の能力向上が見込めないような場合には、解約権の行使が有効になる可能性はあります。
    ただし、①求められる英語レベルを明確に伝えていたか(ビジネスレベルに対する会社側と従業員との認識の相違)、②当該従業員の能力に応じた他の業務の有無(代替措置の検討)、解約権行使前に従業員に事情聴取をして、弁明の機会を与えたか否か等も、解約権行使が有効になるための重要な要素となります。
    また、上記裁判例(ニュース証券事件)を前提にすると、試用期間中という理由だけで解雇が無効になる可能性もあるため、一般的には試用期間満了まで雇用を継続し、試用期間満了時点で、資質・能力・適性等を踏まえて本採用の可否を判断すべきでしょう。

    3.解雇予告または解雇予告手当
    試用期間が14日を超えた場合、解雇予告(30日前の予告)をするか、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支給する必要があります。
    「14日」の起算日が、勤務開始日ではなく、労働契約締結日であるという点に注意してください。

回答した専門家
法律(弁護士)

岸野 祐樹

海外進出、海外企業との取引やトラブル、M&A、対日投資や国内法務も含め、お気...

2016年〜2017年にかけて、上海市・台北市の現地法律事務所で執務していました。
海外滞在中は、異なる法律・価値観・ビジネス慣習に触れ、日本の良さや足りない部分を感じることができました。今後も、日本と中華圏のビジネスを法律面からサポートできればと思っています。
最近は新規ビジネス(データ、共同開発、スキーム立案)のご相談が増えています。スタートアップ企業の皆様のお役に立てると思います。

ライセンス

弁護士
認定経営革新等支援機関

重点取扱分野

【中国法・台湾法】対日投資、インバウンド、契約書、法律意...

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