今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
既存の海外取引先から値下げを要望されました。
EPA/FTAの活用も含め、どのような貿易コスト削減策があるか教えてください。
海外取引先の陸揚(調達)価格をいかに下げるか価格構造の分析が鍵となります。
値下要望の真意は、調達コストの削減による買主粗利の維持拡大であり、輸入国倉庫に商品が到着するまでの「陸揚価格の削減」と解釈できます。陸揚までの全ての原価、マージン、外部経費をそれぞれ試算し、想定調達コストに占める割合をおおよそ把握します。この割合と値下げ要望額を睨みながら、どの部分をどの程度削減すれば満足できるのか考えます。売主の努力で管理できるコスト、単価に含まれているがそのまま社外に支払う経費、価格条件(インコタームズ)に含まれていないが陸揚価格には影響するものなど、様々な要因が可視化されます。
売主による原価低減やマージン圧縮以外にも、物流コストなど社外発生経費も削減できる余地がないかゼロベースで検討します。又買主との交渉姿勢も重要です。値下げ要望を実現した場合、どの程度の期間、どの程度の注文が期待できるのか、買主案を入手することが重要です。注文台数がコミットされる場合は、値下原資が計算しやすくなり、コミットされない場合でも、一定期間内に一定数量を注文した後リベートを支払う提案をするなど、交渉の糸口を探ります。又注文規模が見えれば社外発生経費の交渉にも好影響が期待できます。EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)を活用し関税を減免するのも有効です(日本EPA/FTA発効署名件数 21ケ国/経済地域 2021/1時点)。その為には製品の「原産国」と「関税分類」が条件に一致する必要があり、通常売主側で(一般/特定)原産地証明書を準備します。ただよく使用される価格条件FCA(FOB)やCIP(CIF)等では、輸入国での関税減免を輸出国の売主が取引単価に反映できない為、買主と交渉して減免メリットを陸揚価格で評価させ、値下げ交渉や台数増に取り込む努力が必要です。価格交渉は契約内容や取引実態に即して行う必要がありますが、一見自社で管理できそうもない項目でも、十分な分析検討によって、妥協点が見つかる場合がありますので、粘り強く折衝して下さい。