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今の工場が手狭で、新しい設備の導入も思うようにできないので、新工場を建設することを計画しています。適正な設備投資額をどのように考えればいいですか?
投資対効果と資金繰りの2つの観点で判断しましょう。
まず、設備投資の是非の意思決定については、設備投資によって、企業の競争力が向上し、収益を上がることが前提条件となります。
競争力向上・収益アップの具体的な内容としては
・高度な設備導入によって、今まで対応できなかった受注にも対応できるようになる。
・生産キャパシティの増大によって、受注数量増に対応できるようになる。
・生産性向上によりコスト低減が見込める。
・既存設備では、修繕費がかさむので、新設した方がコスト低減できる。
などが考えられます。
その上で、適正な設備投資額については、以下の2つの観点で考える必要があります。
① 投資対効果が見込めるかどうか。
② 資金繰りに悪影響を及ぼさないかどうか。
それぞれについて説明します。
1.投資対効果が見込めるかどうか
設備投資の目的は、収益を上げることです。設備投資金額に見合った収益が上げられるかどうかが1つ目の観点です。
投資対効果を考えるための指標はいくつかあります。その1つとして、たとえば、回収期間法という考え方があります。
これは、投下した資本を何年で回収できるかという考え方です。以下の計算式で計算します。
・回収期間 = 設備投資額 ÷ 設備投資によって得られる年間キャッシュフロー
・設備投資によって得られる年間キャッシュフロー
= 設備投資によって得られる利益 + 設備投資に関わる減価償却費
現代のように変化が大きく、不確実性の高い事業環境下において、投下資本の回収に時間がかかる設備投資は、投資対効果が低いと言えるでしょう。
2.資金繰りに悪影響を及ぼさないかどうか
2つ目の観点は、資金繰りへの影響です。
大型の設備投資に際しては、多くの場合、金融機関から借入をして設備投資することになります。借入金の返済負担が重ければ、資金繰りが回らなくなるリスクがあります。
そもそも、設備資金の返済原資は、利益です。正確にはキャッシュフローです。
・簡易キャッシュフロー = 当期純利益 + 減価償却費
借入の年間返済額が、キャッシュフローの金額内であることが望ましいです。
・借入の年間返済額 <= 簡易キャッシュフロー
資金繰り悪化は、倒産に直結します。過剰投資は、よくある倒産の一つの典型です。そういう意味で、資金繰りに悪影響を及ぼさないかどうかは、設備投資の適正額の判断としてより重要と言えるでしょう。