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伯父が経営する小売店を手伝っています。伯父の子供には事業承継の意思がなく、私が事業承継する予定です。伯父は個人事業主です。どのような時に法人化を検討すればいいか教えてください。
事業承継が前提であるなら法人化しましょう。
(回答:約600〜800字程度)
法人化を検討すべきタイミングは、一般には以下の1〜3のいずれかに該当する時です。
1. 売上高の増加によって、法人化する方が、税金が少なくなる場合
2. 社会的信用が必要な場合
3. 事業承継を計画している場合
一つ一つご説明します。
1. 売上高の増加によって、法人化する方が、税金が少なくなる場合
個人事業主は所得額に応じた所得税を支払うことになります。所得税は累進課税です。所得が高くなれば、税率が上がります。法人税率は一定税率ですので、所得が高額な場合は、法人の方が納めるべき税金が少なくなります。
所得税の具体的な税率は国税庁の「所得税の税率」というページで確認できます。平成28年4月1日現在法令での所得税の税率は、5%から45%の7段階に区分されています。
<課税される所得金額> <税率> <控除額>
195万円以下 5% 0円
195万円超〜 330万円以下 10% 97,500円
330万円超〜 695万円以下 20% 427,500円
695万円超〜 900万円以下 23% 636,000円
900万円超〜1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超〜4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円
所得税額は、課税される所得金額に税率をかけ、控除額を差し引くことで計算できます。例えば、「課税される所得金額」が500万円や1,000万円の場合には、所得税額は次のようになります。
500万円 ×20%- 427,500円 = 572,500円
1,000万円×33%-1,536,000円 = 1,764,000円
なお、個人事業主の税金と法人の税金には異なる点がいろいろありますので、正確な判断のためには税理士の先生に相談されることをお勧めします。
2. 社会的信用が必要な場合
売上金額が大きくなくても法人化が必要な場合があります。それは、法人を対象に事業展開をしている場合であって、事業規模の拡大を計画している場合です。
個人事業よりも法人の方が社会的な信用力が高いです。企業によっては、個人事業主とは取引しない方針の会社もあります。事業規模の拡大を目指している場合は、法人化することで、営業がしやすくなりますので、法人化の必要性が高いと言えます。
(逆に小売店などの消費者向けビジネスの場合は、信用力という面では、法人化の必要性は低いです)
3. 事業承継を計画している場合
最後は、将来的に事業承継を計画している場合です。個人事業はあくまでも個人の事業です。事業を継承していく場合には不利な点があります。具体的には、個人事業の場合、各種の許認可、事務所等の賃貸借契約などは個人事業主に帰属します。
たとえば、建設業許可などは継承できないので、事業承継後に後継者が改めて許可申請を行うことが必要になってしまいます。法人の場合は、会社という法人が許認可や契約の主体者という点で事業の継続性が高くなります。
また、個人事業の場合は、事業で使用している店舗や事業資金も個人のものです。仮に、個人事業主である伯父さんが死亡された場合、事業で使用している店舗や事業資金も含めて、事業の後継者ではない伯父さんの相続人が相続することになってしまいます。
法人事業の場合は、個人の財産と事業用資産は明確に区分されます。その点でも事業の継続性が高くなりますので、将来の事業承継に備えるために、法人化を計画されることをお勧めいたします。