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息子が会社を継いでくれることとなり、私が所有している自社株の承継を進めているところなのですが、会社の株主は私だけではなく、経営に関与しない親族も存在します。
これらの親族が所有する株式については、どのように考えれば良いでしょうか。
少数株主にも様々な権利がありますので、経営層への株式集約に早めに取組みましょう。
会社経営における様々な意思決定をスムーズに行うために、現社長や後継者(経営層)の持株比率を「過半数」や「3分の2以上」確保するための対策が必要です。
その理由は、持株比率「過半数」での普通決議(決算承認、役員選任など)、「3分の2以上」での特別決議(定款変更などの重要な決議)の意思決定を行えるようにするためです。
しかし、これだけでは十分な対策とは言えません。
なぜなら、少数株主(経営に関与しない持株比率の少ない株主)側にも様々な権利があり、それらの権利が行使される事で会社経営に大きな影響を与えかねないためです。
具体的には、持株比率に応じて下記の権利等を有します。
A.持株1株以上 ・・・ 株主代表訴訟提起権
B.持株比率1%以上 ・・・ 株主総会議題・議案提出権
C.持株比率3%以上 ・・・ 株主総会招集請求権、役員解任請求権、会社帳簿閲覧権
D.持株比率10%以上 ・・・ 会社の解散請求権
E.持株比率33.4%以上 ・・・ 特別決議の単独否決権
例えば、持株比率3%で会社帳簿を閲覧する事ができ、株主の権利を毀損させるような取引が見つかった場合、株主代表訴訟を提起する事も可能です。
この他、少数株主からの株式買取請求リスクについても考えておく必要があります。
少数株主側では「経営に口出しできない」「昔から株式を所有させられているだけで1円の配当すら無い」「にも関わらず、株式に対する相続税や贈与税は課せられる」等の問題があり、経営層や会社に株式を買い取ってもらいたいというケースが多々あります。
株式を買い取ってもらえない場合、第三者への売却を会社に承認してもらう手続き(譲渡承認の請求)がなされ、この請求を不承認とした場合、現会社法では会社又は会社が指定する者(通常、社長)が買い取らなければなりません。
また、買取り金額の折り合いがつかない場合、決着がつくまでの間供託金が必要になります。
これらは、経営層にとって大きなリスクではないでしょうか。
自社株の承継は、承継先やタイミング等の方針決定だけでなく、株価引下げ、同族株主(親族)間の意見調整など、大変時間を要するテーマですので、分散株式の集約には早めに取り組まれる事をお勧めいたします。