今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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当社の勤務時間は9時00分〜17時30分(休憩60分)で、17時30分を超えたら、賃金に1.25倍した残業代を払っていました。しかし知り合いの社長に聞くと「17時30分〜18時00分までの残業代は必ずしも1.25倍しなくても良い」そうですが、なぜそうなるのかわかりません。ちなみに10人未満の企業で就業規則はありません。
残業代のうち割増賃金は労働基準法で条件が定められています。
「1日8時間または週40時間(「法定労働時間」といいます)」を超える労働時間には労働基準法の定めにより割増賃金を払わなければなりません。各企業で定めた休憩時間を除いた労働時間(「所定労働時間」といいます)が1日8時間、週40時間の会社であれば、「所定労働時間=法定労働時間」ですので、所定労働時間を超えた場合、1.25倍した残業代を支払うということです。しかし御社のように「所定労働時間<法定労働時間」の場合、知り合いの社長さんが指摘されたように「17時30分〜18時00分までの残業代は必ずしも1.25倍しなくても良い」のです。
詳しく説明しますと、所定労働時間の9時00分〜17時30分の賃金は、例えば時給1,000円とすると、1,000円×7.5時間=7,500円となります。さらに、17時30分から18時30分まで残業した場合、17時30分〜18時00分の賃金は、1,000円×0.5=500円ですが、18時00分を過ぎるとその日の1日の労働時間が8時間を超えますので、1.25倍の割増賃金が発生します。つまり、18時00分〜18時30分までの賃金は、1,000円×1.25×0.5=625円です。よって、9時00分〜18時30分まで働いた日の賃金は、7,500円+500円+625円=8,825円となります。
ただし、これまでの慣行で17時30分を過ぎた時間の賃金を1.25倍していた場合や、就業規則に「所定労働時間を超えた分の賃金は1.25倍する」等の定めをしていた場合には、この場合、「17時30分〜18時00分までの賃金には1.25倍ではなく1倍とする」と変更することは労働者に対する不利益変更となりますので、会社だけの都合で一方的に変更ができません。もし変更したい場合には労使間の丁寧な協議が必要だと考えられます。
上記の例では1日の勤務時間7時間30分のフルタイムの労働者で説明しましたが、起業当初はアルバイトやパートタイマーを活用されると思います。その際、各従業員の所定労働時間と法定労働時間を意識して労働時間を管理して、過不足なく賃金をお支払い頂くことが大切だと考えます。できれば、労働者10人未満の早いうちに就業規則を整備して、労働時間の管理方法、残業のルール(残業命令による残業と私的な居残りとの区別)、給与支払のルールを明確にして頂くことをお勧めいたします。