今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
不況で売り上げが激減し、これまでの借入金や買掛金の支払いが困難となり、買掛金の支払ができなくなりそうです。事業が好転する見込みが立たないため、自己破産を申し立てたいと思います。自己破産の手続について教えて下さい。
一般に債務の支払が不可能になり、事業が継続できなくなった状態を倒産といいますが、破産とは、法律に従って、このような倒産状態を処理する手続の一つです。
「破産の手続」
破産を債務者自らが申し立てることを自己破産といい、自己破産の申し立てがあると、「債務の支払ができない状態」にあれば破産手続開始決定がなされます。法人であれば、債務超過の場合も同様です。
破産手続開始決定後は、裁判所が選任した破産管財人が財産を管理して金銭に換え、得られた金銭を債権者に配当します。手続が終了するまでには概ね6か月以上を要します。
「予納金」
破産の申立てには、裁判所に予納金を納める必要があります。最低20万円が必要で、債権者数や事業の規模などに応じて裁判所が定めます。賃借事務所・工場の明渡費用など、管財人が管財事務を行うにあたって見込まれる費用がある場合には、相応の予納金を納める必要があるので、注意が必要です。
「弁護士費用」
自己破産の申立を弁護士に依頼する場合には、予納金の他に弁護士費用が必要となります。法人かどうかや事業の規模等により個々の弁護士と相談の上決定されます。
◆保証人への影響
法人の債務についての保証人は、法人が破産しても債権者から請求を受けることになります。法人の債務のために自宅等の不動産を担保に差し入れている場合は競売手続が申し立てられることも予想されます。
「保証人の債務の処理」
★自己破産
●概要
支払が不可能である場合、法人と共に自己破産の申立を検討します。自己破産の対象になる債権は、法人に対する保証債務だけでなく、固有の債務(消費者金融からの借入金や住宅ローンなど)を含みます。
個人が自己破産の申立をした場合も、法人の場合と同様に破産管財人が選任され、財産を管理・換価することがあります。但し、破産手続開始決定前に存在した財産のうち、99万円までは手元に残すことができる可能性があり、また、決定後に働いて得た収入の財産は手元に残すことができます。
●支払いを免れるには
破産しても支払義務を免れるには「免責」を得なければなりません。免責不許可事由がないかなどが審理され、免責許可の決定が確定すると、破産手続開始決定前の債務については、税金や不法行為による損害賠償債務の一部などを除いて支払義務を免れます。
●破産手続開始決定により受ける不利益
1.官報に掲載されます。
2.一定の職業に就くことが制限されることがあり、持分会社の社員や株式会社・有限会社の取締役、監査役については退任事由になります。
3.一定期間、ローンやクレジットを利用することができなくなります。
●免責が決定した場合の効果
1.負債を支払う必要がなくなります。
2.資格制限から開放されます。
●予納金
代表者が自己破産を申し立てる場合にも、少なくとも20万円程度の予納金等(法人と同時期に申立てる場合には、この金額は2〜3万円程度となります。)が必要となります。但し、予納金は、法人と同様に個々の事情によって定められます。
もっとも、保証人が代表者の親族の場合などで、財産を換価しても破産手続の費用も満たさないことが明らかな場合には、破産管財人を選任せずに、破産開始決定とともに破産手続を終了(同時廃止)させることもあります。この場合にも、2〜3万円程度の予納金で足りることになります。
★経営者保証ガイドラインの利用
破産には、上記のような不利益があり、また、破産の場合、原則として99万円までしか自由財産として手元に残せません。
そこで、破産を回避して経営者の再起を促すため、「経営者保証ガイドライン」という手続きを利用することが考えられます。債権者との合意の下で保証債務を整理するものですが、このガイドラインの利用により、破産の不利益を回避し、また、手元に残せる財産が増える余地がありますので、可能であれば、破産よりもこのガイドラインの利用を優先的に考えるのが望ましいでしょう。
もっとも、このガイドラインによって整理できるのは原則として経営者の経営していた法人等の借入金債務に対する保証債務ですので、法人等の買掛金に対する保証債務や経営者自身の固有の債務は対象外であることに留意が必要です。