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弊社は上場を目指しているスタートアップです。資金的な余裕がないのですが、優秀なスタッフを雇うためにインセンティブを付与したいと考えています。税制適格ストックオプションとはどのようなインセンティブなのでしょうか。
無償で付与され株式譲渡益課税の対象となるストックオプションです。
ストックオプション(SO)とは、役職員等に付与される新株予約権です。会社が大きく成長すれば役職員はSOを行使して株式を売却することで大きな利益を得ることができます。会社は資金を拠出することなく役職員にインセンティブを付与することができるため、急成長して上場をめざすスタートアップでよく用いられています。
SOにも、無償・有償の別、税制適格・非適格の別があります。
税制適格SOは、非適格SOと異なり、権利行使時に課税が生じません(課税の繰延べ)。その後株式を譲渡した時点で、譲渡時の時価から権利行使価額を差し引いた額が株式譲渡益課税の対象となります。株式譲渡益課税は申告分離課税の対象となっているため、定率の所得税が課されることとなります(住民税と合わせて20.315%)。
非適格SOでは、権利行使時に行使時の株価から権利行使価額を差し引いた額が給与課税(累進課税)の対象となるため、スタートアップの場合、税制適格SOの方が役職員にとって税負担軽減につながることが多いです。
税制適格SOの要件のうち、主なものとして、①会社の役職員に無償付与されたものであること、②SOの行使期間が付与決議の日後2年を経過した日からその付与決議の日後10年(一定の場合は15 年)を経過する日までとされていること、③SO権利行使価額の年間合計額が一定額を超えないこと、④1株当たりの権利行使価額がSO付与契約締結時の1株の時価以上であること等があります。令和6年度税制改正により、会社の役職員だけでなく、一定の要件の下、社外高度人材にも税制適格SOを付与することができるようになりました。また、上記③の年間権利行使価額上限も引き上げられ、会社が設立5年未満の場合は2400万円、設立5年以上20年未満の場合(非上場か上場後5年未満の場合に限る)は3600万円、それ以外の場合は1200万円とされました。
さらに、SO行使後の株式について、従前は証券会社等に株式保管を委託する必要がありましたが、上記改正により、SOを発行した会社自身で管理を行うことができるようになりました。
(回答日:2024年8月23日)