大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン)

有効な懲戒解雇がなされた場合,退職金は支給しなくてよいか

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  • 有効な懲戒解雇がなされた場合,退職金は支給しなくてよいか

    今般,従業員が私生活上の問題を起こし,警察沙汰となりました。そこで,会社としては,その従業員を懲戒解雇するとともに,退職金も不支給決定しようと思うのですが,特に法律上,問題はないでしょうか。

    懲戒解雇が有効であっても,退職金は支給しなければならない可能性があります。


    1 有効な懲戒解雇=退職金の不支給ではない
      退職金支給規程等においては,一般的に,懲戒解雇された場合には退職金を支給しない旨のいわゆる退職金不支給条項が定められています(なお,この不支給条項すら定められていない場合は,不支給決定はおよそ認められませんので,注意が必要です)。
      そのため,懲戒解雇が有効に行われた場合には,当然に,退職金を支給しなくてよいとも考えられますが,判例上はそうではなく,後述の通り退職金不支給には制限がかけられています。

    2 退職金の不支給措置に関する裁判例
      裁判例では,労働者のそれまでの勤続の功を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合にはじめて退職金不支給決定ができるとされています。
      例えば,鉄道会社社員が電車内で痴漢行為を行い(私生活上の行為),その結果,有罪判決を受けた事案において,裁判所は,懲戒解雇自体は有効としつつも,退職金については,全額不支給措置を否定し,3割分の支払を命じました(東京高判平成15年12月11日労判867号5頁)。また,運送会社にセールスドライバーとして勤務する者が,自家用車で帰宅中に酒気帯び運転で検挙され罰金20万円に処された事案において,裁判所は,ここでも懲戒解雇自体は有効としつつ,退職金の全額不支給措置は否定し,本来の退職金の約3分の1を支給すべきとしました(東京地裁平成19年8月27日LLI/DB判例秘書登載)。
      以上の通り,裁判所は,私生活上の問題行為を原因として退職金不支給とする場合は,業務上の横領や背任など,会社に対する直接の犯罪行為に匹敵するような強度の背信性がなければ全額不支給とはできないと考えています(前掲・東京高判参照)。

    3 小括
      以上の通り,私生活上の問題を生じさせた従業員への退職金不支給決定は,慎重に判断する必要があります。例えば,今回の従業員の問題行為には有罪判決が下されており,また,その行為が新聞報道等により広く世に知られ,会社の取引先への信頼が失われる等会社への重大な悪影響を及ぼしていること,さらには,本件退職金の支給規程は功労の程度等により大きな金額の開きが出るように定められており(賃金の後払い的性格より功労報償的性格が強い),しかも本件従業員の勤続年数が極めて短い等の事情が揃っている場合には,全額不支給も適法とされる余地がありますが,そうでなければ,全額不支給までは認められない可能性が高いです(ただし,減額は認められる可能性があります)。

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